【11月12日 AFP】中国四川(Sichuan)省の少数民族、チャン人(Qiang)の集落である桃坪(Taoping)村。ツアーガイドで学芸員のZeng Yuyinさん(40)は、1000年の歴史を誇る石造りの要塞の4階から6階にかけて走る小さな「ひび」を指差す。「(5月12日の)四川大地震のときにできたものです」

 地震発生時、隣接する町では、比較的新しい建物でも次々と崩壊したが、この要塞のほとんどの建物は無傷だった。要塞の一部の壁が崩落しただけだ。要塞には118家族、600人近くが暮らしているが、死者もケガ人も出なかったという。

 Zengさんは「チャン人の家は堅牢です。われわれのモットーは『早く建てるな、頑丈に建てろ』です」と誇らしげだ。

 村は、龍門山(Longmen)断層帯の上にあり、映秀鎮(Yingxiu)と北川(Beichuan)県にはさまれている。いずれも地震で大きな被害をこうむった場所だ。

 地震による死者・行方不明者数は、チャン人が多く暮らす北川県では約2万人、映秀鎮では6000人にのぼる。死者・行方不明者の総数は8万8000人だが、チャン人はその3分の1にあたる3万人を占め、これはチャン人の人口の約10%にあたるという。

■要塞を「世界遺産」に

 チャン人は、数世紀にわたりチベット人、漢人との戦争を繰り返したのち、その大半が中国南西部の四川省に居を構えた。要塞内は、防御の目的で迷路のようになっており、トンネルも張り巡らされている。水道と巨大な暖炉も備えられている。

 政府は、桃坪をユネスコ(UNESCO)の世界遺産(World Heritage Site)に登録したいと考えている。当局者は最近、「ほかには見られない構造とずばぬけた耐震性は、登録するにふさわしい」と地元メディアに語っている。

 一方で政府は、長期的復興計画の一環として、北川県の観光業界に今後3年間で197億元(約2800億円)を支援することにしている。(c)AFP/Robert J. Saiget