【5月30日 AFP】四川大地震による土砂崩れでできた四川(Sichuan)省北川(Beichuan)県の唐家山(Tangjiashan)のせき止め湖では30日、降り続く雨で決壊の危険が一段と高まる中、排水路を作る必死の作業が続いている。

 国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)によると、兵士らが3日にわたって昼夜を問わず作業した結果、排水路は幅50メートル、長さ300メートルまで掘り進められた。しかし豪雨のため機材を運ぶヘリコプターが飛び立てず、作業は滞っており、今のペースで作業を続けた場合の完成は6月5日ごろになるという。

 唐家山せき止め湖の水量は、五輪用プール5万個分にも達している。決壊した場合に洪水の被害を受けると想定される下流域では、すでに1万7000人が避難を終了したほか、残る住民も決壊時に備えて緊急避難訓練を繰り返している。

 国営新華社(Xinhua)通信は、地震でできたせき止め湖は四川省全域で34に上り、うち28か所で決壊の危険があると報じている。

 一方、震源地に近い北川(Beichuan)県擂鼓(Leigu)鎮で28日、化学工場で火災が発生、発生したガスで4人が中毒症状を訴え、800人以上が避難する事件があった。県共産党書記長によると、火災原因は殺菌用の薬品が雨漏りの水と反応して自然発火したことだという。

 また、中国側の要請に基づいて自衛隊機を派遣して支援物資を被災地に輸送する計画を検討していた日本政府は30日、派遣を当面は見送ることを正式に発表した。町村信孝(Nobutaka Machimura)官房長官は、日中間の「慎重な協議」の結果で、テントなど物資輸送には民間機のチャーター機を利用すると述べた。

 その上で、派遣見送りについて「中国国内で一部慎重論が出始めていることも踏まえ、日中間で協議した結果だ。摩擦が起きてまでやる話ではない。その辺は慎重に考えた」と、自衛隊機派遣に対する中国世論の反発を考慮したことを明らかにした。(c)AFP/Robert J. Saiget