【5月14日 AFP】われわれは現在、宇宙探査機を太陽系の端まで送り、地球の裏側にいる友人とインスタントメッセージを交換し、インターネットを通して遠隔操作で外科手術まで行うことも可能だ。こうした最新技術を、大型サイクロンや大地震に見舞われたミャンマーや中国の数十万人の被災者救援に用いることができるだろうか――。

 残念ながら、答えはノーだ。21世紀に入った現在でも、災害救援の様子は20世紀半ば、もしくはそれ以前からほぼ変わっていない。

 国際非政府組織(NGO)オックスファム(Oxfam)の広報のイアン・ブレイ(Ian Bray)氏によると、ミャンマーや中国の人里離れた被災地の救援には、コメや毛布、テントなどを積み込んだトラックやボートに頼るしかないという。

 航空機による輸送はスピーディーで魅力的だが「救援物資を届けるには、非常に非効率かつ費用がかかる方法」だという。ヘリコプターでは輸送できる量が少なく、航空機による物資投下では被災者の間で物資の奪い合いが起こり、結局力があり健康な者だけにしか行き渡らない可能性がある。

 浄水器や医療機器などの救援機器は、高温多湿な厳しい環境や乱暴な輸送に耐えるように、そして現地の住民でも扱えるように簡素かつ頑丈でなければならないという。

 つまり、最先端の病院で大卒の技師だけが使用できるような機械は、論外だということだ。

 また、食糧も高タンパクのビスケットや、ピーナッツをベースとした食品などが開発されている。しかし、被災者がもっとも必要とする食べ物は、食べなれていて消化しやすいものだ。結果、コメがもっとも重宝することになる。

 国際赤十字(International Federation of the Red Cross)のGraham Saundersさんはこんな失敗談を披露する。

 アフガニスタンでの救援活動の際、配られた備蓄食料の箱は、ぼろぼろになった道路の穴をふさぐために使われていた。地元住民は誰も、見たこともないこのラップをかけられた箱に食べ物が入っていると知らされていなかったのだ。

 英慈善団体「International Rescue Corp」のジュリー・ライアン(Julie Ryan)氏によると、中国の大地震では、がれきの下の生存者の捜索には、最新技術と救助犬、それに救助隊員の「勘」とを組み合わせることになるとの見方を示す。

 こうした現場では、建物の倒壊現場で音を拾い、三角法で生存者の位置を割り出す、これまで用いられてきた信頼性の高い音声収集装置システムや、がれきの下にも差し込めるよう自在に曲がる棒の先にカメラが取り付けられた装置が用いられる。

 意識を失って空間に閉じこめられると空間内の二酸化炭素濃度が上昇することを利用した分析装置も開発された。

 また、試作品段階ではあるが、がれきの下のすき間や、運がよければ生存者の心音を探知できる地上レーダーシステムもある。さらに実現はかなり先になるとみられるが、がれきに埋まっている人などに向かうよう訓練したネズミを放し、ネズミの脳に埋め込んだ発信装置で生存者の居場所を知らせるという方法を、米軍の科学者が実験しているという。

 ライアン氏は、「われわれは科学技術の進歩を重要視している」としながらも「だけど、この分野では直感が大事なこともたくさんあるんだ」と語る。(c)AFP/Richard Ingham