【5月13日 AFP】中国で12日の午後2時30分(日本時間午後3時30分)ごろ発生した四川(Sichuan)省を震源とするマグニチュード7.8の大地震は、震源から約100キロ離れた省都・成都(Chengdu)にも強い揺れをもたらした。

 その時、高層ビルの18階にあるコンサルタント企業に勤務するリチャード・モーガンサンジュージョ(Richard Morgan-Sanjurjo)さん(30)の頭のなかには、ビルから脱出することしかなかった。

 リチャードさんはAFPの電話取材に対して「通気口がガタガタと音を立てた次の瞬間、ビル全体が大きく揺れ、天井の一部がはがれ落ちてきた」と、大地震が襲った瞬間の様子を語る。「すぐに思った。これはやばい!ここから脱出するんだってね」

 リチャードさんは、一目散に非常階段を目指した。「心臓が破裂するほど必死で駆け下りた。ビルが全壊すると思ったんだ。ニューヨーク(New York)の同時テロで崩壊したツインタワーのようにね」

 非常階段は、必死で逃げる会社員らが殺到していた。「背後からは『早く!』という叫ぶ声が聞こえた。押されて転んだ人の上をさらに人々が駆けていく。転倒した人も踏みつけられながら立ち上がって、また走り出すんだ」

 何とか地上にたどりつくと、路上には周辺のビルから避難してきた数千の人々であふれていた。しかし、意外にも人々は皆、冷静だったという。

「中にはパジャマ姿の人もいた。でも、『本当に怖かった』と話し合うくらいで、取り乱す人はいなかった。初めは家族や知り合いを心配していた人々の話題は、じきにペットや家の心配に変わっていった。」

 最初の揺れが成都を襲ってから6時間後、リチャードさんは携帯電話と家の鍵を取りに、一時的にビル内への立ち入りを許可された。

 路上はまだ多くの人々であふれ、テントを張る姿もみられたという。

「おそらく、ガス管の点検が終わるまで当局から建物内への立ち入りを禁じられているのだろう。電気は通じていたので、近くの食堂の人たちが炊き出しを行っていた」

 ビルの一部が壊れたりガラスが割れるなどの被害はあったものの外見上は成都の街に大地震の傷跡は見られない。

  一方、生徒の引率で成都を訪れていた教師のアリサ・ウェイムズ(Ailsa Weymes)さんは、初めの揺れがあったとき、バスの中だったため、道路のでこぼこのせいか、荒っぽい運転のせいかと思ったという。

 その後、強い余震に襲われたとき、ウェイムズさんたちは食堂で食事をしていた。

「身体の全身で揺れを感じた。テーブルも床も電灯も、全てが揺れていた。揺れは20秒くらい続いた。まだ食事中だったけど、店の外に避難するよう言われた」

 米地質調査所(US Geological SurveyUSGS)によると、この時の震度はマグニチュード5.8だった。

 しかしウェイムズさんによると、食堂内の人々は落ち着いていたという。また、ある女性は揺れが続く間、数珠を持って祈っていたという。

 12日の大地震は上海(Shanghai)だけでなく、北京(Beijing)や香港(Hong Kong)、さらに隣国のタイ、ベトナムでも強い揺れが観測された。(c)AFP/Benjamin Morgan