【8月30日 AFP】米ルイジアナ(Louisiana)州ニューオーリンズ(New Orleans)は29日、壊滅的な被害をもたらした大型ハリケーン「カトリーナ(Katrina)」襲来から2周年を迎え、1500人の犠牲者を悼む追悼式やキャンドルサービスが催された。

 市内の公園では「カトリーナ記念碑(Katrina Memorial)」の除幕式が行われた。記念碑の周囲にハリケーンを模して渦状に巡らされた小道の脇には、身元不明の犠牲者約100人の遺体が埋葬された。

■被災から2年、難航する復興

 2年前の2005年8月29日、米国南東部沿岸を襲った「カトリーナ」は、ニューオーリンズ市内の多くの地域を水没させた。数千人の市民が自宅の屋根の上で救援を待ち、冠水を免れた地域では略奪などの暴力行為が発生した。

 生き残った人々は、今も厳しい生活を送る。破壊され尽くした街の復旧は難航し、行政手続きの怠慢から数十億ドルの米政府援助は滞ったままで、各方面で非難合戦が繰り広げられている。

 ニューオーリンズがかつての「魂(ソウル)」を取り戻すにはまだ時間がかかりそうだ。

■生活費は高騰、犯罪は増加

 電気代や保険料、税金は法外なまでに高騰した。自宅が被災した住民にとっては、信頼できる業者を見つけるのも一苦労で、政府の役人や保険会社に働きかけ、何とかして保険適用を受けようと躍起になっている。

 犯罪も増加した。市内では今年に入ってから140件の殺人事件が発生しており、「殺人の街」と呼ばれたかつての汚名が復活しかねない勢いだ。被害の大きかった市東部では、銃を持った犯罪者グループが白昼堂々と襲撃を繰り返し、安心して働くこともままならない。

 また、精神的なストレスが住民に与える悪影響も見過ごせない。最近の政府調査によれば、米東部沿岸地域の住民の間で、精神疾患の発症率は1年間で倍増した。自殺を考えたことのある人々や、PTSD(心的外傷後ストレス障害)症状に苦しむ人々も急増しているという。

■復興に格差、それでも住民はニューオーリンズを選ぶ

 復興の兆しが見えてきた地域もある。観光客に人気のフレンチクォーター(French Quarter)やガーデン・ディストリクト(Garden District)など、高台のため被害が少なかったミシシッピ川沿岸の地区は、すでに「カトリーナ」以前の活気を取り戻しつつある。

 しかしその周囲の低地では、再建が進む住宅の隣に、破壊された住宅が放置されたままになっていたり、更地だったりと、復興の進度に格差がある。壊滅的な打撃を受けた地域では、雑草が生い茂り人間が生活する気配もない。

 それでも、これまでに市の人口の半数以上の住民が、被災した自宅を再建すべくニューオーリンズに戻ってきた。現在、市の人口は27万5000人。

 被災後もこれほど多くの人々がニューオーリンズに住み続ける理由について、葬儀場を営むある男性は、「ニューオーリンズの住民は、この街を誇りに思っている。この街には人を引き付けずにはおかない独自性があるんだ。魅力的な建築物や食べ物、それにニューオーリンズ・セインツ(New Orleans SaintsNFLのチーム)もね」と話した。(c)AFP/Allen Johnson Jr.