【9月17日 AFP】(一部更新)米国の首都ワシントン(Washington D.C.)にある海軍施設で16日、銃を乱射し計12人を殺害した後に射殺されたアーロン・アレクシス(Aaron Alexis)容疑者(34)が、怒りを制御できない問題を抱え、過去に警察沙汰を起こしていたことが明らかになった。

 テキサス(Texas )州にある仏教寺院で定期的に瞑想したり、独学でタイ語を学ぶなどしていたアレクシス容疑者は、物静かな男性として知られていた。

 米連邦捜査局(FBI)の発表によると同容疑者は、身長185センチ、体重86キロのアフリカ系米国人男性。FBI公開した2枚の写真では両方とも髪の毛を剃り上げている。

 米海軍によれば、ニューヨーク(New York)生まれのアレクシス容疑者は2007~11年まで海軍に務めていた。その大半はテキサス州のフォートワース(Fort Worth)海軍航空基地で後方支援任務を行っていたとされる。

 AFPの取材に匿名で応じた士官からは、アレクシス容疑者の除隊理由が不名誉除隊処分によるものかどうかはつかめなかったが、容疑者の次の勤務先となる米IT大手ヒューレット・パッカード(Hewlett-PackardHP)の下請業者ジ・エキスパーツ(The Experts)への就職を妨げるような記録は残っていない。同社は米海軍と海兵隊の内部ネットワークを扱う防衛関連企業で、アレクシス容疑者は契約社員として働いていた。

 一方で、アレクシス容疑者は海軍に入隊する3年前にシアトル(Seattle)の祖母宅付近で、建設作業員に馬鹿にされたと怒って自動車のタイヤを撃ち抜き、警察沙汰になっている。このとき警察に対し、発砲後1時間程度まで発砲したこと自体を思い出せないと述べ、自分は激怒すると意識がなくなることで苦しんでいると打ち明けていた。また、2001年9月11日の米同時多発テロ発生時はニューヨークにいて、いかに精神を乱されたかを語っていた。

 警察が後に会ったアレクシス容疑者の父親は、息子が怒りを制御できない問題は心的外傷後ストレス障害(PTSD)によるもので、同容疑者は「(同時多発テロの際)積極的に救援に参加していた」と述べたという。

 この他にもフォートワースの自宅アパートで、騒音をめぐり日ごろから口論があった上階住民の部屋を銃弾が突き抜けたことがあったが、いずれの事件も不起訴となっている。

 ただし元ルームメイトや友人らの間ではもっぱら「物静か」「怒ったことがない」という評判だった。友人の1人、マイケル・リタバト(Michael Ritavato)氏は、唯一何か問題があったとすれば、日本での契約業務の報酬が支払われていないと数か月前に文句を言っていた程度だという。またアレクシス容疑者は長時間自室にこもり、暴力的なビデオゲームに興じていたともリタバト氏は語った。

 アレクシス容疑者が通っていたテキサス州の寺院の見習い僧J・シルン(J. Sirun)氏は、米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)に対し「表から見れば、非常に静かな人物だった。しかし内面は非常に攻撃だったのではないか。彼は誰とも親密になりたがらず、まるで戦地からの帰還兵みたいだった。こんなに暴力的な人物だとは思わなかった。自殺したと聞いても驚かなかっただろうが、人を殺すことができるとは思っていなかった」と語った。(c)AFP