【7月24日 AFP】中国当局が英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKlineGSK)を贈賄容疑で狙い撃ちしたことは、多大な利益を求め中国市場に進出する外国企業にそのリスクを再認識させた──。

 中国当局は、売り上げを伸ばすために5億ドル(約500億円)近い贈賄を行った容疑で、GSKの幹部4人を拘束した。だが専門家らは、中国における薬剤の入札制度の不透明さと医師らの低い収入を考慮すると、GSKだけが腐敗に手を染めていたとは考えにくいと指摘する。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、GSKが贈賄を行う際に仲介させた旅行代理店を、他の外国製薬会社も利用していたと報じた。また、中国当局は英製薬大手アストラゼネカ(AstraZeneca)の上海(Shanghai)の従業員3人を事情聴取し2人を拘束。ベルギーの製薬大手ユーシービー(UCB)の事業所にも当局者が現れたという。

 他にも中国政府は、薬剤から粉ミルクまで幅広い外国企業の商品価格について調査を行っているが、これは外国企業に圧力をかけて小売価格を操作することが狙いだとみられている。この行動は同時に、中国で経済活動を行う上で「落とし穴」が存在することを再確認させるものでもある。

 外国の投資家は、中国で改革開放政策が始まった1978年以来、中国に総額1.3兆ドル(約130兆円)の投資を行っている。経済協力開発機構(OECD)の推計によれば、2012年に最も人気の高かった対外直接投資先は中国だった。

 しかし一方で外国企業は、国内企業を優先する中国の経済環境に対して不満をもらしている。在中国米国商工会議所(American Chamber of Commerce in China)も2013年版の政策白書で「中国は、国営企業や国内大手企業を優先する慣行に徐々に戻っている」と述べている。

■狙いは外資企業の商品価格引き下げか

 GSK事件に加え、中国当局は、サンド(Sandoz)やメルク(Merck)などの大手を含む国内外の製薬企業60社の価格決定方法についても調査を進めている。中国政府が手頃な保健医療の提供を目指す中、中国国家発展改革委員会(National Development and Reform CommissionNDRC)は1998年以来、薬剤の低価格化を目指してきた。

 贈賄事件を受けて中国を訪問したGSKの経営幹部は、より低価格で薬剤を提供できるよう小売価格を下げると約束した。

 中国側の一連の動きについて、コンサルティング会社サブライム・チャイナ・インフォメーション(Sublime China Information)のZhao Zhen氏は、複数の外資製薬会社が取り調べを受けているとしながら、「(当局が)全ての外資製薬会社を対象としていることを示唆する情報もある」と語った。

 だが、中国政府による外国製品の価格引き下げキャンペーンにもかかわらず、外国からの投資は鈍化しない見通しだ。

 中国市場という巨大な「好機」を前にした外国企業にとっては、その「ルール」に従う以外に方法はない。「これで投資が止まることはないだろう。中国は市場として重要すぎる」と、コンサルティング会社チャイナ・マーケット・リサーチグループ(China Market Research Group)のベン・キャベンダー氏は指摘している。(c)AFP