【7月17日 AFP】極右ネオナチ(Neo-Nazi)運動に関わりがあるとされ、殺人の前科があるノルウェー人ミュージシャン、クリスティアン・ビーケネス(Kristian Vikernes)容疑者(40)が16日、「大規模なテロ行為」を企てている恐れがあるとして、フランスで逮捕された。仏内務省が明らかにした。

 ビーケネス容疑者は、フランス中部のサロンラトゥール(Salon-la-Tour)村にある自宅で同日の明け方、フランス人の妻、マリー・カシェ(Marie Cachet)容疑者(25)と共に情報当局者によって逮捕された。内務省によると、ビーケネス容疑者は、ノルウェーで2011年に77人を殺害したアンネシュ・ベーリング・ブレイビク(Anders Behring Breivik)受刑者とも、かつてつながりがあったという。

 内務省は、「ネオナチ運動に近い」ビーケネス容疑者が「大規模なテロ行為」を企図している恐れがあるとしたが、マニュエル・バルス(Manuel Valls)内相は後に「標的と計画のいずれも」まだ特定されていないことを認めた。

 音楽活動では「バルグ(Varg)」と名乗るビーケネス容疑者は、ノルウェーでは悪名高いブラックメタル(ヘビーメタルの一種)ミュージシャンで、1990年代前半に仲間のミュージシャンを刺殺した他、複数の教会に放火したことで知られている。この殺人事件により94年に禁錮21年の有罪判決を受け、16年服役した後に仮釈放され、2010年にフランスに移り住んだ。

 ブラックメタルは、ヘビーメタルの過激なサブジャンルの1つ。そのミュージシャンやファンは反キリスト教的な考えを示すことが多く、1992~96年にかけてノルウェーで50以上の教会が燃やされた事件にも関与していた。

 ビーケネス容疑者は過去数年間にわたって監視対象となっていたが、今月初め、武器の購入許可を取得している妻のカシェ容疑者が合法的に武器を購入したのをきっかけに、パリ(Paris)のテロ対策当局はビーケネス容疑者の捜査を開始。16日には両容疑者の自宅から、22口径ライフル4丁を含む複数の武器が押収された。

 バルス内相は、当局がビーケネス容疑者の逮捕を重要と判断したのは「後手に回ることなく先手を打つため」だと述べた。「国内情報中央局(DCRI)は、同容疑者がインターネットに投稿したメッセージには甚大な暴力が表現されているとみなした」とし、「妻による武器と銃弾の購入は、テロ計画が可能であることを示唆していた。より詳しく知るため、この計画がどういうものであり得るかを知るために、DCRIは同容疑者を逮捕し取り調べることが重要だと考えた」ことを明らかにした。(c)AFP/Jacques CLEMENT