観光客ねらう犯罪増加、パリのイメージダウンに
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【6月26日 AFP】パリ(Paris)観光中に「英語を話せますか」と聞かれたら、地元住民の意見を聞き入れて、「ノー」と返答するように。
これは、観光当局者が出し始めた観光客向けのアドバイスの1つだ。パリでは外国人を標的にした詐欺やスリなどの犯罪が増加しており、当局は治安強化と観光客への注意喚起キャンペーンを実施している。
一般的な手口の1つは、観光客に「英語を話せますか」と近づき、架空の慈善団体を支援するための署名を求め、最終的に寄付を要求するというものだ。
市当局は英語やロシア語、中国語、日本語など複数の言語で無料のガイドブックを配布し、「このような状況では、慎重に行動し、立ち去りなさい」とアドバイスしている。
昨年2900万人の観光客が訪れたパリでは、4月以降、主な観光地に警察官200人を連日配置している。自転車に乗った私服警官が大半だ。
■ゆすり、サクラ、さまざまな手口
ルーブル美術館(Louvre Museum)の中庭でボトル入り飲料水を販売するインドからの移民のソヌ・シンさんは、「毎日のようにありとあらゆるバカげた出来事を目撃しているよ」と語る。
「偽物のゴールドの指輪を持って相手に近づき、『これ落としましたか』と聞く。そのあとで、『あなたはゴールドの指輪を手に入れたんだから』と言って5~10ユーロ(約600~1300円)を要求するんだ」
警察によると、裕福な人が標的にされているという。エッフェル塔(Eiffel Tower)のあるパリ7区の当局者によると、1回のゆすりで1万ユーロ(約130万円)ほどまき上げることもあった。
別の手口に、3枚の円盤を使った賭けがある。円盤の1枚にだけ表面に白い円が付いていおり、3枚の中からこの円盤を当てると、賭け金の50ユーロ(約6400円)を倍額にしてもらえるというゲームだ。
エッフェル塔のそばで中年男性がゲームの呼びかけを始めると、エレガントな身なりの女性(共犯者)が現れ、数回の賭けで大金を手にして立ち去る。
初の欧州旅行を楽しんでいた米バージニア(Virginia)州の学生、キャシー・レイノルズさんはその様子を見て50ユーロを賭けてみたが、すぐにその賭け金を手放すことになった。
しばらくすると、またさきほどの女性が現れて大金を手にし、通行客の注目を集めていた。
「手早くお金稼ぎがしたかった。とっても簡単に見えた。けど、最後の瞬間にカードはすり替えられる」と、レイノルズさんは語った。
■パリの治安悪化、ルーブル美術館や高級ブランドも抗議
レイノルズさんと一緒に旅行をしているクリスタさんは「ロンドン(London)の方がずっと安全だった。ここでは、いつも標的にされているように感じる」と語る。
ニュージーランドから来たトム・ポーターさん(43)も同意する。「ローマ(Rome)については警告を受けていたけれど、実際は何も起きなかった。ここではどこに行っても声をかけられる」
ルーブル美術館の職員は4月、スリ増加に抗議して1日休館するストライキを行った。以後、美術館に配備される警察官の人員数は増加したという。
フランスの高級ブランドが参加するコルベール委員会(Comite Colbert)も最近、治安の悪化により資金潤沢な観光客の出足が鈍る恐れがあると述べ、当局に対策を求めた。(c)AFP