【6月25日 AFP】仏アルプスのリゾート地で昨年9月、英国籍のイラク人男性ら4人が銃で殺害された事件で、死亡した男性の兄が24日、事件に関わった疑いがあるとして英国で逮捕された。仏検察当局が発表した。

 ザイド・ヒリ(Zaid al-Hilli)容疑者(54)は、英ロンドン(London)近郊のサリー(Surrey)州で殺人を共謀した容疑により身柄を拘束された。英警察は、当初から予定していた拘束だったと述べている。

 昨年9月の事件では、容疑者の弟のサード・ヒリ(Saad al-Hilli)さんとその妻イクバル(Iqbal)さん、イクバルさんの母が殺害された他、自転車で通りかかった仏人男性も巻き添えとなり死亡している。生還した夫婦の娘2人のうち1人は、警察に発見されるまでの数時間、死亡した母親のそばに身を潜めていた。

 仏アヌシー(Annecy)のエリック・マイヨー(Eric Maillaud)検察官がAFPに語ったところによると、捜査当局は、ザイド容疑者の自宅や勤め先のゴルフ用品・レジャー関連会社の事務所を捜索したという。

 捜査当局は、事件が兄弟の父親が残した不動産相続をめぐって起きたものとみている。21日に収録された英ITVニュース(ITV News)とのインタビューでマイヨー検察官は、サードさんの自宅から見つかった書類に、サードさんがイラクにある不動産の相続権を主張するために帰国しようとしていた矢先に、襲撃された可能性が示されていたと述べた。

「父親の遺産をめぐり家族が関与しているとみている。父親はたくさんの財産を持っていたわけではないが、重要な不動産を所有していた。兄弟はどんな手段に訴えてでもこの不動産を手に入れたかった。結果、家族内に緊張状態を生み出していたのだろう」

「発見した手紙や、交わした会話から、彼(サードさん)が不安を覚えていたことが分かる。手紙には、父親の遺産を手にしたいとの願望によってもたらされた身の危険と、家族との確執についての不安をつづっていた」

(c)AFP/Guy JACKSON