仏パリで極左18歳少年が殴られ死亡、極右グループといざこざ
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【6月7日 AFP】(一部更新)フランスの首都パリ(Paris)市中心部のサンラザール(Saint-Lazare)駅近くで5日、極右の若者グループとけんか沙汰になった極左活動家の少年が、殴られて脳死状態に陥り、翌6日に死亡した。
死亡したのは、市内でも名高いパリ政治学院(Sciences-Po)に通う学生のクレマン・メリック(Clement Meric)さん(18)。同級生や教師らによると、模範的な学生で強い社会的良心を持っていたという。活動家仲間の学生も「信念は強いが、攻撃的な人物ではなかった」と証言している。
警察は事件に関係したとみられる男6人と女1人の身柄を拘束し、事情聴取を行っている。メリックさんを死に至らしめた一撃を加えたとされる20代の男は、殺意はなかったと供述しているという。この男は「スキンヘッド」(頭髪を剃った極右系の若者)として知られていた。
■ナックルダスターで一撃
事件発生の経緯については、情報が錯そうしている。
両グループのけんかは、サンラザール駅近くにある極右活動家らに人気の衣料品店前で発生した。警察によると、店内で「スキンヘッド系」の若者グループとメリックさんらのグループが鉢合わせし、ののしり合いや小突き合いになったという。その後スキンヘッド系グループは店を出ていったが、店の前で仲間たちと待ち伏せをし、そのうちの1人が店から出てきたメリックさんをナックルダスター(メリケンサック)を装着した手で殴った。メリックさんは歩道に倒れ込む際に頭部を車止めのくいにぶつけたという。
仕事帰りに騒動の終盤を目撃したという女性は、AFPの取材に次のように証言した。「大勢の人が四方八方に走り回っていた。頭をそり上げた若者たちはその場を離れように見えたが、戻ってくると突然、1人の若者を殴りつけた。若者は倒れて車止めにぶつかった。被害者は耳と鼻から血を流していた」
ある警察関係者によると、メリックさんは「極左の反ファシズム運動」に関わっていたという。
■メリックさんの死を悼み1万5000人
人々でにぎわう首都中心部の繁華街で起きた暴力事件に、パリ市民には大きな衝撃が広がっている。
6日夕方、パリ市内やメリックさんの出身地ブレスト(Brest)などフランス各地ではメリックさんの死を悼むデモが行われ、1万5000人以上が参加した。現場近くにも数百人が集まり、スペイン内戦時の反ファシストスローガン「やつらを通すな!」をスペイン語で叫んだ。メリックさんが参加していた「反ファシスト行動(Action Anti-fascist)」のメンバーは、「ファシズムは壊疽(えそ)だ。排除せよ、さもなければ殺される」と訴えた。
政治家らも党派を超えて事件を批判しており、過激化を強めるグループについては違法とするよう求める声も出ている。フランスでは最近、同性婚合法化をめぐる抗議デモで極右グループによる暴力的な衝突が複数発生していた。(c)AFP/Marianne Barriaux