【5月23日 AFP】メキシコ西部ミチョアカン(Michoacan)州にある人口1万人のコアルコマン(Coalcoman)。麻薬カルテル「テンプル騎士団(Knights Templar)」から町を守ろうと、防弾チョッキを身につけライフルを背負った農民たちが、「自衛」の文字が派手に書かれた軽トラックに乗っている。

 コアルコマンは麻薬カルテルの温床として知られているティエラ・カリエンテ(熱い土地)と呼ばれる地域にある。メキシコ政府は今週、数千人の兵士をコアルコマンなどに配備したが、自警団員たちは再び安全を取り戻すまで武器を手放すつもりはない。

 先週コアルコマンの中央広場で、約200人からなる自警団を支持する住民集会が開かれた。この数か月、ミチョアカン州の複数の町でギャングによるゆすり行為や暴力を撃退するため住民が武器を手に立ち上がったが、コアルコマンはその最新の例だ。

「クオータ(割り当て)を払うのは、もううんざり」と32歳の薬局店員アドリアーナ(Adriana)さん。「支払わないと誘拐されて『バーン、バーン』って殺されるのよ」。「クオータ」とはテンプル騎士団が毎週あるいは毎月、事業主、農民、タクシー運転手などからゆすりとる金のこと。市長さえクオータをゆすりとられている。

 フェリペ・カルデロン(Felipe Calderon)前大統領は2006年、麻薬カルテル撲滅のため兵士と海兵隊員を全土に配備したが、ミチョアカン州はその最初の州だった。しかしカルデロン前大統領が退任した昨年12月までにメキシコでは麻薬組織による暴力で7万人が死亡し、ミチョアカン州では新しい強力な麻薬組織テンプル騎士団が出現した。

 エンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)大統領は今週、ミチョアカン州に1000人の連邦警察官とともに4000人の兵士と海兵隊員を配備し、同州が平穏になるまでとどまらせると宣言した。(c)AFP/Leticia PINEDA