【5月13日 AFP】独ニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)は12日、東西冷戦時代に欧米の製薬会社が旧東ドイツで5万人以上を対象に臨床試験を行い、しばしば患者に十分な説明を行っておらず、死者も数人発生していたと伝えた。

 1989年のベルリンの壁(Berlin Wall)崩壊まで、旧東ドイツの50か所以上の病院で約600件の臨床試験が実施されていたことが、旧東ドイツ保健省や製薬関連機関、秘密警察シュタージ(Stasi)などの未公開資料から判明したという。旧西ドイツやスイス、米国の大手製薬企業の多くがこうした臨床試験に参加し、資金が不足していた旧東ドイツの医療制度を支援するとして、1試験当たり最高80万ドイツマルク(現在の為替レートで約40万ユーロ、約5300万円)が支払われていたとされる。

 記録によると東ベルリン(East Berlin)では、現在は仏製薬大手サノフィ・アベンティス(Sanofi-Aventis)に合併された独総合化学メーカー、ヘキスト(Hoechst)が開発した血行促進剤「トレンタール(Trental)」の臨床試験中に2人が死亡した。

 また、現在はスイスの製薬グループ、ノバルティス(Novartis)に買収された製薬会社サンド(Sandoz)が開発した血圧治療薬について、マクデブルク(Magdeburg)にある肺専門の医院で行われた臨床試験でも、2人の患者が死亡した。

 シュピーゲル誌によると、患者はしばしば薬剤の危険性や副作用について十分な説明を受けていなかった。また、早産児やせん妄を発症したアルコール依存症患者など、インフォームド・コンセントができない患者に対する臨床試験も行われていたという。

■製薬会社、業界団体は報道を否定

 シュピーゲル誌が製薬各社に取材を申し込んだところ、大半の企業が臨床試験はずっと昔に実施されたものだと指摘し、現在、臨床試験は常に原則として厳格な手順にのっとって実施されていると説明したという。

 またドイツの製薬業界団体は「今のところ、不法なことが行われたと推測する理由はない」と述べている。(c)AFP