米女性監禁事件、証言から垣間見える容疑者像
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【5月13日 AFP】米オハイオ(Ohio)州クリーブランド(Cleveland)で女性3人を誘拐し、約10年にわたって監禁していた罪などで訴追されたアリエル・カストロ(Ariel Castro)容疑者(52)には、まるで「ジキルとハイド」のような複数の人格が垣間見られるという──。周囲には社交的で音楽好き、親切な隣人として知られていた一方で、前妻と子どもたちを虐待していたことも分かってきた。
古ぼけているという点を除けば、ごく普通の容疑者宅。ここを訪れたことがある人、あるいは近所に住んでいた人は誰も、行方不明になっていたアマンダ・ベリー(Amanda Berry)さん(27)、ジョージーナ・デヘスース(Georgina DeJesus)さん(23)、ミシェル・ナイト(Michelle Knight)さん(32)らが中に閉じ込められているとは思いもしなかったようだ。
カストロ容疑者が被害者女性たちをどのように「支配」していたのかは明らかになっていない。容疑者の自宅からはロープやチェーンが見つかっているが、警察は容疑者が被害者たちに薬物を与えた形跡などはないようだとしている。
解放された女性たちによると、10年の間、3人が容疑者の家を出たのはわずか2回。カストロ容疑者がウィッグなどで変装させた女性たちをガレージへと連れて行ったという。
6日にベリーさんが逃げ出した直後、容疑者の兄のペドロ(Pedro Castro)さん(54)、弟オニル(Onil Castro)さん(50)も一時身柄を拘束された。しかし被害者3人と兄弟たちから事情を聞いた警察は、事件に兄弟が関与していなかったものと判断している。
■評判の良いカストロ家
カストロ容疑者の祖先は、第2次世界大戦(World War II)後にコーヒーで有名なプエルトリコのヤウコ(Yauco)からクリーブランドへと移り住み、その後、親類の一部が工業の中心地であるエリー湖(Lake Erie)周辺に移動したという。
2004年に死亡した容疑者の父親、ノナ・カストロ(Nona Castro)氏は中古車販売業を経営していた。おじのフリオ・カストロ(Julio Castro)さんは現在も、食料品店を営む地域のヒスパニック系住民の中心人物だ。(容疑者宅がある)シーモア・アベニュー(Seymour Avenue)では、カストロ家はおおむね評判の良い一家だった。
ベリーさんが逃げ出すのを助けた近所のレストラン従業員、チャールズ・ラムジー(Charles Ramsey)さんは、地元テレビ局に対し「俺は1年前からここに住んでる。あいつとは一緒にバーベキューもした。リブ肉だとか色んなものを食って、サルサを聞いた。(言いたいことは)分かるだろ?」と語った。
ラムジーさんはまた、容疑者が以前、裏庭で飼い犬たちと遊んでいるところを見たことがあると話しており、容疑者のフェイスブック(Facebook)にも「うちの家族はチャイニーズ・クレステッド・ドッグが大好き」との書き込みが見られた。その他、車やバイクをいじるのが好きだとも書き込まれている。
しかしフリオ氏は、おいである容疑者について、2004年に父親が他界した後は親類と疎遠になっていたと話す。2004年はデヘスースさんが姿を消した年であり、ベリーさんはその前年、ナイトさんはさらにその前の年に行方不明になっていた。フリオ氏は米CNNのスペイン語チャンネルで、「甥は多分、二重生活を送っていたのだろう」と語った。
■家族に見せていた残忍な顔
2012年に亡くなったカストロ容疑者の前妻、グリミルダ・フィゲロア(Grimilda Figueroa)さんは2005年、カストロ容疑者が娘のエミリー(Emily Castro)さんとアーリーン(Arlene Castro)さんを頻繁に連れ去り、母親から引き離しているとして家庭裁判所に訴えた。その訴状の中でフィゲロアさんは、(カストロ容疑者の暴力で)「鼻を2回、肋骨を1回骨折し、歯が折れ、肩を2回脱臼したほか、脳に血栓ができた」と主張。またカストロ容疑者のフィゲロアさんに対する「殺す」といった脅しを止めさせるよう裁判官に求めた。
オハイオ州シンシナティ(Cincinnati)の銀行に勤める同容疑者の息子アンソニー・カストロ(Anthony Castro)氏(31)は7日付けの英大衆紙デーリー・メール(Daily Mail)で、何年も虐待がつづいた後、1996年にフィゲロアさんが3人の子どもたちを連れて容疑者の家を出たと語っている。
Fox系列のクリーブランド地元局が伝えたところによると、皮肉なことにフィゲロアさんの2人目の夫である元警備員フェルナンド・コロン(Fernando Colon)受刑者は2004年、今回保護された被害女性3人の件について、米連邦捜査局(FBI)の捜査官から事情を聞かれていた。さらに同年、義理の娘であるエミリーさんとアーリーンさんに対する性的虐待で起訴されたコロン氏の裁判で証言していたのはカストロ容疑者だった。コロン受刑者は有罪判決を受け、性犯罪者として登録された。現在上訴について検討中だという。
■表れ始めていた態度の変化
クリーブランドの地元紙、プレイン・ディーラー(Plain Dealer)によると、カストロ容疑者は22年間、時給18.91ドル(約1920円)スクールバスの運転手をしていた。しかし、2012年11月に最終的に解雇されるまでにいくつも問題を起こしていた。
2004年には特別支援学級の児童を乗せたバスを止めてファストフードを購入したことが発覚。2009年には、違法なUターンで停職。さらに2012年には買い物目的でバスを利用したとして、2度目の定職処分を受けた。教育委員会の記録によると、解雇の直接の理由は2012年、自宅から2ブロック離れたところにある小学校に駐車してバスを離れ、「休むため」に数時間、家に帰っていたことだった。
同紙はまた、容疑者は仕事が終わると地元で人気のラテンミュージックバンド「グルーポ・カノン(Grupo Kanon)」でベースギターを弾いていたことを伝えている。バンドには15年前から断続的に参加しており、最近ではフェイスブックでカスタムメードの6弦ベースギターの写真を投稿していた。
しかし容疑者と20年来の知り合いだというバンドリーダーは、「仲間として演奏してもらうこともできた。だが、ここ数年はことあるごとに『身構える』ようになり、頼りにならないメンバーになっていた。家から出られなかったのだろう」と話している。
息子のアンソニー氏によれば、父親と話をするのは年にわずか数回だったという。容疑者宅には、いつ訪ねても20分以上は滞在できず、さらにいくつかの部屋には入ることが許されなかったという。
不動産会社のウェブサイトによると、1890年に建てられた133平方メートルの容疑者の家は、この地区に多い「コロニアル」様式。ベッドルーム4部屋とバスルームが1つ、ガレージと地下室が付いている。市場価格は推定10万5000ドル(約1066万円)だというが、カストロ容疑者の逮捕時、この家はすでに固定資産税の滞納により差し押さえられていた。(c)AFP/Mira Oberman
古ぼけているという点を除けば、ごく普通の容疑者宅。ここを訪れたことがある人、あるいは近所に住んでいた人は誰も、行方不明になっていたアマンダ・ベリー(Amanda Berry)さん(27)、ジョージーナ・デヘスース(Georgina DeJesus)さん(23)、ミシェル・ナイト(Michelle Knight)さん(32)らが中に閉じ込められているとは思いもしなかったようだ。
カストロ容疑者が被害者女性たちをどのように「支配」していたのかは明らかになっていない。容疑者の自宅からはロープやチェーンが見つかっているが、警察は容疑者が被害者たちに薬物を与えた形跡などはないようだとしている。
解放された女性たちによると、10年の間、3人が容疑者の家を出たのはわずか2回。カストロ容疑者がウィッグなどで変装させた女性たちをガレージへと連れて行ったという。
6日にベリーさんが逃げ出した直後、容疑者の兄のペドロ(Pedro Castro)さん(54)、弟オニル(Onil Castro)さん(50)も一時身柄を拘束された。しかし被害者3人と兄弟たちから事情を聞いた警察は、事件に兄弟が関与していなかったものと判断している。
■評判の良いカストロ家
カストロ容疑者の祖先は、第2次世界大戦(World War II)後にコーヒーで有名なプエルトリコのヤウコ(Yauco)からクリーブランドへと移り住み、その後、親類の一部が工業の中心地であるエリー湖(Lake Erie)周辺に移動したという。
2004年に死亡した容疑者の父親、ノナ・カストロ(Nona Castro)氏は中古車販売業を経営していた。おじのフリオ・カストロ(Julio Castro)さんは現在も、食料品店を営む地域のヒスパニック系住民の中心人物だ。(容疑者宅がある)シーモア・アベニュー(Seymour Avenue)では、カストロ家はおおむね評判の良い一家だった。
ベリーさんが逃げ出すのを助けた近所のレストラン従業員、チャールズ・ラムジー(Charles Ramsey)さんは、地元テレビ局に対し「俺は1年前からここに住んでる。あいつとは一緒にバーベキューもした。リブ肉だとか色んなものを食って、サルサを聞いた。(言いたいことは)分かるだろ?」と語った。
ラムジーさんはまた、容疑者が以前、裏庭で飼い犬たちと遊んでいるところを見たことがあると話しており、容疑者のフェイスブック(Facebook)にも「うちの家族はチャイニーズ・クレステッド・ドッグが大好き」との書き込みが見られた。その他、車やバイクをいじるのが好きだとも書き込まれている。
しかしフリオ氏は、おいである容疑者について、2004年に父親が他界した後は親類と疎遠になっていたと話す。2004年はデヘスースさんが姿を消した年であり、ベリーさんはその前年、ナイトさんはさらにその前の年に行方不明になっていた。フリオ氏は米CNNのスペイン語チャンネルで、「甥は多分、二重生活を送っていたのだろう」と語った。
■家族に見せていた残忍な顔
2012年に亡くなったカストロ容疑者の前妻、グリミルダ・フィゲロア(Grimilda Figueroa)さんは2005年、カストロ容疑者が娘のエミリー(Emily Castro)さんとアーリーン(Arlene Castro)さんを頻繁に連れ去り、母親から引き離しているとして家庭裁判所に訴えた。その訴状の中でフィゲロアさんは、(カストロ容疑者の暴力で)「鼻を2回、肋骨を1回骨折し、歯が折れ、肩を2回脱臼したほか、脳に血栓ができた」と主張。またカストロ容疑者のフィゲロアさんに対する「殺す」といった脅しを止めさせるよう裁判官に求めた。
オハイオ州シンシナティ(Cincinnati)の銀行に勤める同容疑者の息子アンソニー・カストロ(Anthony Castro)氏(31)は7日付けの英大衆紙デーリー・メール(Daily Mail)で、何年も虐待がつづいた後、1996年にフィゲロアさんが3人の子どもたちを連れて容疑者の家を出たと語っている。
Fox系列のクリーブランド地元局が伝えたところによると、皮肉なことにフィゲロアさんの2人目の夫である元警備員フェルナンド・コロン(Fernando Colon)受刑者は2004年、今回保護された被害女性3人の件について、米連邦捜査局(FBI)の捜査官から事情を聞かれていた。さらに同年、義理の娘であるエミリーさんとアーリーンさんに対する性的虐待で起訴されたコロン氏の裁判で証言していたのはカストロ容疑者だった。コロン受刑者は有罪判決を受け、性犯罪者として登録された。現在上訴について検討中だという。
■表れ始めていた態度の変化
クリーブランドの地元紙、プレイン・ディーラー(Plain Dealer)によると、カストロ容疑者は22年間、時給18.91ドル(約1920円)スクールバスの運転手をしていた。しかし、2012年11月に最終的に解雇されるまでにいくつも問題を起こしていた。
2004年には特別支援学級の児童を乗せたバスを止めてファストフードを購入したことが発覚。2009年には、違法なUターンで停職。さらに2012年には買い物目的でバスを利用したとして、2度目の定職処分を受けた。教育委員会の記録によると、解雇の直接の理由は2012年、自宅から2ブロック離れたところにある小学校に駐車してバスを離れ、「休むため」に数時間、家に帰っていたことだった。
同紙はまた、容疑者は仕事が終わると地元で人気のラテンミュージックバンド「グルーポ・カノン(Grupo Kanon)」でベースギターを弾いていたことを伝えている。バンドには15年前から断続的に参加しており、最近ではフェイスブックでカスタムメードの6弦ベースギターの写真を投稿していた。
しかし容疑者と20年来の知り合いだというバンドリーダーは、「仲間として演奏してもらうこともできた。だが、ここ数年はことあるごとに『身構える』ようになり、頼りにならないメンバーになっていた。家から出られなかったのだろう」と話している。
息子のアンソニー氏によれば、父親と話をするのは年にわずか数回だったという。容疑者宅には、いつ訪ねても20分以上は滞在できず、さらにいくつかの部屋には入ることが許されなかったという。
不動産会社のウェブサイトによると、1890年に建てられた133平方メートルの容疑者の家は、この地区に多い「コロニアル」様式。ベッドルーム4部屋とバスルームが1つ、ガレージと地下室が付いている。市場価格は推定10万5000ドル(約1066万円)だというが、カストロ容疑者の逮捕時、この家はすでに固定資産税の滞納により差し押さえられていた。(c)AFP/Mira Oberman