米女性3人監禁事件、戦慄の10年間
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【5月11日 AFP】死の恐怖の下に置かれた監禁状態でクリスマスに生まれた子供、何度もの流産、強姦の繰り返し、残虐な殴打──このどれもが、米国のある家の中でこの10年にわたり起きていたことだ。
労働者階級が多く住むオハイオ(Ohio)州クリーブランド(Cleveland)市西部のシーモアアベニュー(Seymour Avenue)にあるアリエル・カストロ(Ariel Castro)容疑者の家から、女性3人と6歳になる少女が救出されてから数日後、被害者たちがカストロ容疑者の「囚人」として過ごした10年間の恐ろしい体験が明らかになりつつある。
地元メディアが報じた警察の初期発表によると、カストロ容疑者は6日、ついに気が緩んだのか、重い扉に南京錠をかけるのを忘れたままマクドナルドに食事へ出かけた。
2003年、17歳の誕生日の前日に誘拐されたアマンダ・ベリー(Amanda Berry)さんはこの隙に乗じることができたが、カストロ容疑者が「自分を試そうとしているのではないか?襲おうと待ち構えているのではないか?」という疑念を振り払うまで苦渋した。
一緒に監禁されていた6歳の娘と2人の女性のために、ベリーさんは危険を冒すことを決意した。重い扉を引くと、さらに外には金網製の網戸があり、鍵がかかっていた。ベリーさんは助けを求めて叫んだ。
絶叫を聞きつけた近所の男性が駆け付け、娘のジョセリンちゃんと一緒に助け出された段階で、ベリーさんは警察に通報した。
現場へ急行した警官たちは扉を破り、家を捜索。2階へ続く階段を上りきろうとしたとき、02年に20歳で誘拐されたミシェル・ナイト(Michelle Knight)さんが警官の腕に飛び込んできた。続けて04年に14歳で誘拐されたジョージーナ・デヘスース(Georgina DeJesus)さんも発見された。その後、女性たちの話から、監禁生活の戦慄の全容が明らかになってきた。
■絶食と殴打で流産
CBSニュースが報じた警察発表によれば、ナイトさんは12年近い監禁生活の間に「少なくとも5回」妊娠したと語った。アリエル容疑者は「流産させようとして、2週間以上にわたってナイトさんに絶食させた挙句、ナイトさんの腹部を流産するまで何度も殴った」という。
またベリーさんがジョセリンちゃんを出産した際にはビニール製の子供用プールを家の中に持ち込み、出産時の排出物などが散らからないようにと、強制的にプールの中で出産させた。その際、ナイトさんには出産を手伝うよう命じ、子供がもしも死んだら、ナイトさんを殺すと脅した。この恐怖の2006年12月25日、生まれたばかりのジョセリンちゃんの呼吸が止まり、ナイトさんは必死で人工呼吸した。
ベリーさんへの事情聴取によると、カストロ容疑者は家を離れる際にたびたびジョセリンちゃんを連れて出ることがあったが、ナイトさんやデヘスースさんの実名をジョセリンちゃんが分からないようにしていたという。
女性たちによれば、監禁初期の数年間は地下室で鎖につながれていたが、その後は鍵がかかった家の中で、鎖をつけずに上の階で暮らすことを許されていた。
地元のミュージシャンで、カストロ容疑者の友人のリッキー・サンチェス(Ricky Sanchez)氏はAFPの取材に対し、最近カストロ容疑者の家を訪れた際に少女を見かけ、容疑者に「孫だと紹介された」と語った。またサンチェスさんは地下室で物音がするのも聞き「『何だ?あの音は何だ?』と彼に聞いたら、(カストロ容疑者は)下で飼っている犬だと答えた」と述べた。
さらに「帰ろうとしてドアを開けようとしたら、全然開かなかった。すごくたくさん、鍵がかかっていたからだ。『なんだよ、出られないじゃないか。どうにかしてくれよ』と言うと、彼(カストロ容疑者)が『分かったよ』と言って開けてくれた。あの、正面のドアをね」と語った。 (c)AFP/Mira Oberman