【3月7日 AFP】ロシアの名門ボリショイ・バレエ団(Bolshoi Ballet)の芸術監督セルゲイ・フィーリン(Sergei Filin)氏(42)が1月に顔に酸性の液体をかけられて重傷を負った事件でモスクワ(Moscow)の警察は6日、犯行を指示したとして拘束された男が動機は怨恨(えんこん)だったと供述したことを明らかにした。

 警察は5日、同バレエ団の男性ソリスト、パーベル・ドミトリチェンコ(Pavel Dmitrichenko)、実行犯のユーリー・ザルツキー(Yury Zarutsky)、運転手として加担したアンドレイ・リパトフ(Andrei Lipatov)の3容疑者の身柄を拘束。3人とも容疑を認め供述調書に署名したという。裁判で有罪となれば、ドミトリチェンコ容疑者には最高で禁錮12年の刑が言い渡される可能性がある。事件はドラマを地で行くような劇的な展開となった。

 ロシアのテレビで放映された警察の取り調べの録画映像のなかで、やつれた面持ちのドミトリチェンコ容疑者は、犯行を計画したのは自分だがこのように大事になるとは思っていなかったと供述している。警察は、犯行の動機は「ドミトリチェンコ容疑者が仕事に関連してフィーリン氏に抱いていた個人的な敵対感情」だったとのみ発表した。
 
 ロシア紙モスコフスキ・コムソモレツ(Moskovsky Komsomolets)やイズベスチヤ(Izvestia)は、同バレエ団所属のバレリーナのアンジェリーナ・ボロンツォワ(Anzhelina Vorontsova)さんと交際していたドミトリチェンコ容疑者は、フィーリン氏がボロンツォワさんを重要な役につけなかったことを根に持っていたと報じている。

 フィーリン氏は、数度にわたって視力回復の手術を受けたが現在もリハビリ中で、事件で変わってしまった容貌は元通りにならない恐れもある。名門バレエ団の内側で長年くすぶっていた確執をあらわにした今回の事件は、1776年のボリショイバレエ団創設以来のスキャンダルとなり、同バレエ団が誇ってきた世界的な名声も吹き飛ぶほどの衝撃を与えた。(c)AFP/Stuart WILLIAMS