【12月17日 AFP】米コネティカット(Connecticut)州の小学校で14日に起きた銃乱射事件では、児童20人と教職員6人の命が奪われ、米国でおなじみの銃規制法をめぐる論争に再び火がついた。しかし、米銃規制は州によって大きく異なる。

 1993年に当時のビル・クリントン(Bill Clinton)大統領の署名で成立した通称ブレイディ法(Brady Act)は、米国内で銃を購入する者の身元情報を連邦当局に確認するよう義務付けている。犯罪歴や精神衛生に関する履歴などから潜在的な危険を検知しようというものだ。

 だがこの規制は、インターネット取引を含む個人間の売買や、銃見本市の展示ブースでの販売など、米国の銃販売の4割には及ばず、こうした売買は連邦政府の規制を受けていないのが現状だ。ブレイディ法の対象はわずかな例外を除き、連邦の認可を受けた販売業者やメーカー、輸入業者などに限られている。さらに北はカナダ、南はメキシコと長く国境を接しているため、銃購入の追跡はいっそう困難だ。

■FBIデータベースから漏れた犯人たち

 米連邦捜査局(FBI)が運用している全米犯罪歴即時照会システム(National Instant Criminal Background Check SystemNICS)にも、穴がある。連邦、州、自治体による銃規制強化を求める市長たちの全米組織「違法な銃に反対する市長たち(Mayors Against Illegal Guns)」は、精神的な問題を抱える数百万人に関するファイルがNICSのデータベースに含まれていないことを指摘した。

 今回のコネティカット州の事件で銃を乱射したとされるアダム・ランザ(Adam Lanza)容疑者(20)には精神疾患の病歴があったと報じられている。現場で発見された拳銃2丁とセミオートマチックライフル1丁は、容疑者の母親が合法的に購入したものとみられているが、銃規制支持派は、もっと徹底したデータベースがあればランザ容疑者のような人物の武器入手を防止できたと主張している。

 2011年1月にアリゾナ(Arizona)州で民主党のガブリエル・ギフォーズ(Gabrielle Giffords)下院議員(当時)を殺害しようと銃を乱射し、6人を殺害したジャレッド・ロフナー(Jared Loughner)被告の場合には、不品行による停学処分歴やドラッグ使用歴があったが、身元照会システムは銃購入を認めていた。

■州ごとに異なる身元照会範囲や銃の規制範囲

 これに加え、州によって銃規制が異なることも、規制をかいくぐることをいっそう容易にしている。例えば13州では、売り手側の身元について州外に照会していない。つまり、他州や連邦政府によって記録されている犯罪歴は除外されてしまうのだ。

「銃による暴力防止法律センター(Law Center to Prevent Gun Violence)」のロビン・トーマス(Robyn Thomas)事務局長は「州境を行き来するのは簡単なので、ある州の規制法が厳重でも、別の州に行って銃を買うことが簡単にできる」と指摘する。

 銃販売規制法の大半は、州単位で実施されている。

 カリフォルニア(California)州は最も規制が厳しく、個人売買を含む全ての銃販売に連邦システムへの身元照会を定めている。アサルト武器(assault weapon)や狙撃銃の販売は禁止されており、1人が購入できる銃は1か月に1丁までと制限されている。また、購入には筆記試験を含む州の許可取得が必要だ。こうした規制措置によってカリフォルニア州では過去20年間に銃を使った暴力事件が大きく減少したとトーマス氏は言う。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、今回事件が起きたコネティカット州でも、容疑者が犯行で使ったとされるブッシュマスター(Bushmaster)0.223やM4カービンといったアサルト武器の所有や譲渡は禁止されている。また、犯行に使われたとされる拳銃2丁は、いずれも購入前に認可の取得が必要とされるものだった。

 1994年から2004年まで、連邦法ではアサルト武器の製造と販売を禁止していたが、議会はこの規制を更新することができなかった。また何をもってアサルト武器とするかの定義をめぐり論争となった。

 例えばカリフォルニア州ではアサルト武器の特徴としてスタビライザーがあることや、素早い連射を可能にする大型弾倉などを挙げている。しかし、トーマス氏は、メーカー側は「いつでも抜け道を探し、見つけ出すものだ」と警告している。(c)AFP