【12月11日 AFP】ナイジェリア警察は10日、世界銀行(World Bank)元専務理事として知られるナイジェリアの財務相ヌゴジ・オコンジョイウェアラ(Ngozi Okonjo-Iweala)氏の母親、カメネ・オコンジョ(Kamene Okonjo)さん(82)が同国南部で誘拐されたと発表した。

 9日に発生した衝撃的な誘拐事件は、アフリカの最多人口国にして最大産油国であるナイジェリアの不安定な治安を改めて浮き彫りにした。身代金要求の有無について警察は明らかにしていないが、地元警察はAFPの取材に対し「動機はまだ不明だが誘拐事件であることは間違いない」と説明し、大規模な捜査態勢を敷き犯人らの行方を追っていると語った。

 財務相担当報道官が発表した声明によると事件は9日、身代金目当ての誘拐が多発しているナイジェリア南部デルタ(Delta)州にあるオコンジョイウェアラ氏の両親宅で発生した。地元メディアによれば、オコンジョイウェアラ氏の父親がこの地域の領主であることから地元では「宮殿」と呼ばれている両親の邸宅に白昼、銃で武装したグループが押し入った。

 大学教授であるカメネさんが表門付近で働いていた作業員たちのために飲み物を持って家から出てきたところ、潜んでいた武装グループがカメネさんを捕らえて連れ去ったという。犯行当時、カメネさんの夫は旅行中で不在で、常駐しているはずの警察官の姿もなかったという。また容疑者の1人が家の中に入り、カメネさんのハンドバッグを持ち出したとの報道もある。

 財務省は事件当日の声明で「これまでに財務相自身に対しても脅迫があったが、カメネさんの誘拐犯が同じ人物らであるのか、それ以外の敵意ある動機を持つ勢力なのか見極めるのは難しい」と述べている。

 同国南部の産油地帯ニジェール・デルタ(Niger Delta)での身代金目的の誘拐事件は珍しくはないが、今回のように著名人を対象とした事件はまれだ。

 ニジェール・デルタでは2009年に反政府武装勢力が停戦を宣言して以来、衝突や暴力事件は激減したものの、依然として誘拐事件は大きな問題のままだ。

 ナイジェリアは特に燃料補助金制度をめぐる贈収賄などで、世界で最も汚職がまん延する国の一つに数えられている。

 そうした中、汚職撲滅を推進してきたオコンジョイウェアラ財務相は、石油輸入業者に対する戦いの先頭に立ってきた。

 議会の調査で今年初め、燃料補助金制度を通じて2009~11年の間に68億ドル(約5600億円)が国庫から失われていたことが判明した。ナイジェリア政府はガソリン価格を低く抑える目的で補助金制度を設けている。

 調査報告では長年疑われてきた適切な会計制度の欠如、過払い、故意の法規無視、制度運営能力の明らかな不足などが詳細に明らかにされた。

 尊敬を集めているオコンジョイウェアラ財務相は今年初め、世銀総裁選にも立候補し、米国人による世銀総裁職の独占を破る候補と有力視されたが、最終的には韓国系米国人のジム・ヨン・キム(Jim Yong Kim)氏が就任した。(c)AFP/M.J. Smith