【10月10日 AFP】メキシコ当局は9日、海軍特殊部隊との銃撃戦で死亡した麻薬密売組織セタス(Zetas)の最高幹部エリベルト・ラスカノ(Heriberto Lazcano)容疑者の遺体が葬儀場から奪われたことを明らかにした。

 ラスカノ容疑者は7日、メキシコ北部のコアウイラ(Coahuila)州で起きた治安部隊とセタスの銃撃戦により死亡。その後、遺体は別の男性の遺体とともに、同州サビナス(Sabinas)にある葬儀場に運ばれていた。

 サビナスで記者会見したコアウイラ州のオメロ・ラモス(Homero Ramos)検事は、顔にマスクをした重武装の集団が葬儀場に押し入り、葬儀場の所有者に霊きゅう車を運転させて遺体を運び出したと説明した。ただしメキシコ海軍によると、遺体は奪い去られる前に指紋と写真によってラスカノ容疑者のものであることが確認されていた。専門家が現在、検視から得た情報とサンプルを詳しく調査しているという。

■謎に包まれた素顔

 ラスカノ容疑者は野心的で冷酷な人物とされ、対立する麻薬密売組織のメンバーを殺害し、頭部を切り落とすなどの残忍な行為で知られていた。競馬と金髪女性が好きだということ以外、その私生活はほとんど知られていない。

 メキシコの麻薬カルテルに詳しく、セタスについての著書もあるリカルド・ラベロ(Ricardo Ravelo)氏によると、ラスカノ容疑者は対立相手を捕らえると、飢えさせてその過程を見て楽しんだり、野生動物に食べられるにまかせたりしていたという目撃証言があるという。

 メキシコ政府は260万ドル(約2億円)の懸賞金を懸け、最重要の指名手配犯として同容疑者の行方を追っていた。米政府もラスカノ容疑者に500万ドル(約3億9000万円)の懸賞金を懸けていた。(c)AFP/Henry Orrego