【9月21日 AFP】米オハイオ(Ohio)州で前年、現代文明の利便性を拒み、伝統的な生活を営むキリスト教の一派アーミッシュ(Amish)の分派指導者らが、対立するコミュニティを襲撃して信者らのひげをそるなどした事件の裁判で20日、指導者のサミュエル・マレット(Samuel Mullet)被告(66)と信者ら15人にヘイトクライム(憎悪犯罪)の罪で有罪が言い渡された。

 マレット被告はクリーブランド(Cleveland)から160キロのベルゴルツ(Bergholz)にアーミッシュの農家共同体を持ち、18家族と生活している。

 訴状によると、マレット被告は前年、宗教的に対立関係にあるアーミッシュコミュニティ内9人の襲撃を指示したとされる。

 主に夜間に行われた計5回にわたる襲撃では、就寝中の被害者らをベッドから引きずり降ろし、馬のたてがみを切るための道具や充電式シェーバーで被害者らのひげや髪をそり落とした。その様子は使い捨てカメラに収められていたという。

 アーミッシュにとって、既婚男性のひげと女性の長髪は神への信仰を象徴するものであり、これを切られることは屈辱的な意味を持つ。

 裁判で被告側の弁護士は、ひげをそる程度では「ヘイトクライム」には当たらないと主張した。被害者らを伝統的で正しいアーミッシュの生活に戻したいとの思いから行動に出たと、ひげそり行為を擁護したが、裁判所はマレット被告を有罪と判断した。ただマレット被告は襲撃を命じた罪により起訴されたが、襲撃への参加については罪に問われなかった。

 被告には18人の子どもがいるが、このうち3人の息子も共謀罪とヘイトクライムの罪で有罪となった。

 事件の凶暴性や拉致行為も行われていることから、量刑は最低でも禁錮17年となる見通しだという。量刑の言い渡しは2013年1月24日に予定されている。

 マレット被告は判決を不服とし控訴する構え。

 事件は米メディアでも大きく報道された。一般社会から隔離し、平和的なコミュニティを構築しているとされるアーミッシュ社会の内部を垣間見る希少な機会として、大衆の注目を集めた。(c)AFP/James McCarty