【8月15日 AFP】かつて麻薬王パブロ・エスコバル(Pablo Escobar)が拠点としたことで知られる南米コロンビアの街メデジン(Medellin)で、麻薬密売人や殺人犯らを題材にしたシールブックが子どもたちに人気の大ヒット商品となっている。

 7月末に発売されたばかりの16ページのシールブックは、麻薬密売組織「メデジン・ カルテル(Medellin Cartel)」を創設して悪名を轟かせ1993年に殺害されたエスコバルを始め、ゴンサロ・ロドリゲス・ガチャ(Gonzalo Rodriguez Gacha)、ジョン・ハイロ・バスケス(John Jairo Vasquez)といった札付きの犯罪者たちのシール1パックが付いて、価格は100ペソ(約4円)。完成させるとMP3プレーヤーやiPod、サッカーボールなどの景品がもらえるとあって、子どもたちの間で必携アイテムと化しているという。

 購入できるのは、市内でも最貧困地区に出る露店でのみ。露天商の1人はAFPの取材に、「シールブックはオートバイに乗った男たちが持ってくるんだ。飛ぶように売れるよ、今日はもう売り切れだ」と語った。

 シールブックには製造元や販売元は記載されておらず、背後に何者がいるのかは分かっていない。

 当局の反応は分かれている。市治安当局のセルヒオ・ズルアガ(Sergio Zuluaga)局長は8日、若者たちに悪影響を及ぼしているとして、シールブックを押収する方針を示した。一方、市長室は「何の対策も決まっていない」と発表し、押収方針を撤回した。

■麻薬王のドラマもヒット、貧困層に根強い支持

 エスコバルは南米で最も恐れられた麻薬王の1人。当時、米国で密売されるコカインの大半はメデジン・カルテルを通じて密輸されたものだった。コロンビアの首都ボゴタ(Bogota)や国内各地で連続誘拐・爆破事件を首謀し、絶頂期には世界で最も裕福な男と呼ばれたが93年、メデジンで治安部隊に射殺された。44歳だった。

 しかしメデジンでは、麻薬密売で得た大金を惜しみなく慈善事業につぎ込んだエスコバルを篤志家だとみなす人はいまだに多く、特に貧困層や労働者層では人気が高い。

 また、コロンビアでは今夏、エスコバルの生涯を題材にしたテレビドラマが放映されたが、第1話の視聴者数が1100万人に上るなど大人気を博し、若い世代にエスコバルの神格化が広がるのではないとの懸念も出ている。(c)AFP