【8月14日 AFP】77人が犠牲になった前年7月のノルウェー爆破・銃乱射事件に関する独立委員会は13日、当局が適切な対処をしていれば最初の爆破事件を回避できたうえ、続く銃乱射事件でももっと早い段階で犯人を拘束することが可能だったとする報告書を提出し、警察と政府の対応を厳しく批判した。

 アンネシュ・ベーリング・ブレイビク(Anders Behring Breivik)被告は2011年7月22日、首都オスロ(Oslo)の政府庁舎外で車に仕掛けた爆弾を爆発させ8人を殺害。その後、オスロから40キロ離れたウトヤ(Utoeya)島で1時間以上にわたって銃を乱射し、69人を殺害した。当時、島では与党・労働党青年部のサマーキャンプが開催されており、被害者の大半は10代の若者たちで、最年少の少女は14歳になったばかりだった。

■無視された治安勧告

 イエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)首相が設置した10人からなる独立委は、関係当局の事件への対応を検証。首相に提出した500ページに及ぶ報告書の中で、「政府庁舎への攻撃は既に導入されていた治安措置を効果的に実行することで防げたはず」と結論付けた。

 報告書によると、攻撃を受けた政府庁舎周辺の道路は通行止めにするよう2004年に勧告が出されていたにも関わらず、何の対策も取られていなかった。そのため、ブレイビク被告が爆発物約950キロを積んだ小型トラックを庁舎のすぐそばに駐車することが可能だった。

■現場に急行できなかった警察

 報告書はまた、警察の対応の遅さも批判した。オスロで爆破事件が起きてからウトヤ島でブレイビク被告が逮捕されるまで、3時間以上が経過している。しかも、ブレイビク被告は1時間15分もの間、銃を乱射し続けていた。

 この点について独立委は「もっと迅速な警察の対応は現実的に可能だった。犯行はもっと早い段階で止めることができた」と指摘。ブレイビク被告の手配書の発表が遅れた点や情報伝達の不徹底、適切な手順を踏まなかったこと、不適切な手段を取ったことなどを挙げて、乱射事件前・最中の警察当局の不手際に遺憾の意を示した。

 ウトヤ島は湖に浮かぶ小島で、対岸からの距離はたかだか600メートルしかない。だが、湖岸にパトロール中の警官が駆け付けてから警察特殊部隊が島に上陸するまでには35分を要した。さらに、最初に湖岸に到着した警官2人は、発砲事件時の対応マニュアルに従って島に渡るためあらゆる手を尽くさなければならなかったのに、実際は「ボートが見付からない」と報告しただけで、それに対する上からの指示は監視を怠るなというものにすぎなかった。

 オスロから急行した特殊部隊の第1陣が島に上陸したのは、午後6時27分。簡易ゴムボートが重量に耐えられず壊れ、レジャー用小型船2隻を借りるという騒動の末だった。

 独立委は、これらの経緯においてそれぞれ適切な対応がされていれば、12分は早く上陸でき、もっと多くの命が救えたはずだと指摘している。(c)AFP/Pierre-Henry Deshayes