【8月9日 AFP】中国・重慶(Chongqing)市の党委員会書記を解任された薄熙来(Bo Xilai)氏の妻、谷開来(Gu Kailai)被告が殺人罪で起訴された裁判について活動家らは、妻を身代わりにすることで薄氏が行ったとされる犯罪行為を隠蔽(いんぺい)し、薄氏を支持していた政治家らを守ろうとする中国当局の狙いがあると主張している。

 薄氏と谷被告をめぐる一連の政治スキャンダルは、ここ数十年に中国が経験した中でも最大のものへと発展している。

 谷被告の裁判について中国国営メディアは、被告が前年11月に英国人実業家ニール・ヘイウッド(Neil Heywood)氏を殺害したことを示す「議論の余地がない強固な」証拠があると報じ、当局がこの事件を一刻も早く終息させたいと考えていることも示唆した。

 共産革命で名をはせた指導者の息子である薄氏は、党書記時代に重慶市で行った犯罪分子の厳しい摘発や毛沢東主義復活運動で全国的な名声を得た。だが、薄氏の右腕で重慶市副市長だった王立軍(Wang Lijun)氏が米総領事館に亡命を求めて駆け込んだスキャンダルをきっかけに、権力の座から転落した。王氏はこれに先立ち、ヘイウッド氏殺害に関する情報を手に薄氏と対峙(たいじ)したとされている。

 薄氏の失脚は中国共産党にとって非常に恥ずべき事態であり、党幹部のメンバー間の深い亀裂を明らかにした。アナリストや政治活動家らは、共産党がスキャンダルの終息を待ち望んでおり、今秋に予定されている10年に1度の指導部の交代人事を前に、党上層部へ与える悪影響を最小限にとどめることに躍起になるだろうと推測している。

 薄氏に対する捜査が進められる間、妻の谷被告の裁判に注目が集まることになると活動家らは指摘する。1989年の天安門(Tiananmen)事件で共産党を追われた鮑トウ(Bao Tong)氏(79)はAFPに対し、「昔から同じだ。彼ら(共産党)は隠蔽工作を続けている」と語った。「彼らは政治的茶番、いかさまのショーを演じる。別のスキャンダルが勃発すれば、また同じことを最初から繰り返すだけだ」

 また、妻の裁判で薄氏の汚職疑惑をもみ消すのではなく、両事件を互いとの関連の中で捜査すべきだとの批判も出ている。

 鮑氏は、薄氏に加担したと思われる人々を含む事件の全貌をまず明らかにした上で、谷被告の事件との関わりを調査するべきだと主張している。また、中国の法律では夫婦の資産はお互いに共有されるので、薄氏が妻の谷被告の汚職について全く責任が無かったとは言えないとも指摘した。鮑氏はこのような手順が踏まれることを望むとしつつ、「今のところそういった動きは全く見られない」と嘆いている。

 中国の著名な市民活動家、胡佳(Hu Jia)氏は次のように述べている。「党内で政治闘争が起こると、彼らはさらに閉鎖的かつ不透明になる。司法を通した決断ではなく、政治的懸案事項に基づいた党による決断を行うようになるだろう」。また薄氏と谷被告の処遇については、党で大きな権力を握る政法委員会や胡錦濤(Hu Jintao)国家主席などの最高幹部らが決定権を握る可能性が高いとも述べている。(c)AFP/Robert Saiget