【7月4日 AFP】(一部更新)2004年に死去したパレスチナ解放機構(PLO)の故ヤセル・アラファト(Yasser Arafat)前議長の生体試料から、毒殺に使われることでも知られる放射性物質ポロニウムが検出された。中東の衛星テレビ、アルジャジーラ(Al-Jazeera)が3日、スイスの研究機関の検査結果を報じた。

 スイス・ローザンヌ大(University of Lausanne)放射線物理研究所のフランソワ・ボシュ(Francois Bochud)所長が、アラファト議長が亡くなった仏パリ(Paris)の仏軍病院から夫人に引き渡された遺品を分析した結果、ポロニウムが検出されたと発表した。

 放射性物質のポロニウムは、ロシア連邦保安局(FSB)元情報局員で、その後ロシア政権批判に転じたアレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏が亡命先の英ロンドン(London)で2006年に毒殺された際に使用された。リトビネンコ氏がホテルで出された紅茶にポロニウムが混ぜられていたとされている。

 故アラファト元議長は独立国家を求めるパレスチナの闘争を約40年間にわたって率い、ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)も受賞した。晩年はイスラエル占領下のヨルダン川西岸ラマラ(Ramallah)の議長府に軟禁されていたが、2004年秋に体調が悪化。パリの仏軍病院へ移送され数週間にわたる治療を受けた後、11月11日に75歳で死去した。

 当時、仏政府筋は個人情報保護法を引き合いに、アラファト議長の容体や正確な死因など一切の公表を拒んだため、体調悪化の原因をめぐる噂や陰謀論に拍車がかかった。パレスチナ関係者は、長年の敵であるイスラエルがアラファト議長を毒殺したと非難したが、2005年にパレスチナ当局が行った調査では、がんやエイズ(HIV/AIDS)とともに毒殺の可能性は除外されたものの、結論には至ってない。

 ローザンヌ大のボシュ氏によると、ポロニウムでアラファト議長が暗殺されたという説を証明するには、埋葬されている遺体を掘り出して分析する必要があるという。(c)AFP