【7月4日 AFP】(一部更新)フランスの警察は3日、2007年の大統領選の選挙運動で違法な献金を受けた疑いで、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)前大統領の個人事務所と自宅を捜索した。

 化粧品大手ロレアル(L'Oreal)の大株主で、総資産160億ユーロ(1兆6000億円)とも言われるフランス女性としては1番の富豪リリアン・ベタンクール(Liliane Bettencourt)氏が、選挙資金として現金を詰めた封筒をサルコジ氏の複数の側近に渡した疑いがもたれている。


 サルコジ氏は一切の疑惑を否定しているが、今年5月に決選投票が行われた仏大統領選でフランソワ・オランド(Francois Hollande)現大統領に敗れたサルコジ氏は6月15日に大統領としての刑事免責特権を失っており、汚職や選挙資金違反で取り調べを受ける可能性がある。

 サルコジ氏の弁護士、ティエリ・エルゾーグ(Thierry Herzog)氏は、サルコジ氏は現在家族と共にカナダにいると述べた。仏紙ルモンド(Le Monde)によると、捜査当局はエルゾグ氏の事務所も捜索した。

■富豪の自宅で会合に出席?

 フランスのメディアが伝えている目撃証言によると、サルコジ氏は2007年の大統領選で勝利するまでにベタンクール氏の自宅で少なくとも2度の会合を開いたとされている。

 サルコジ氏は目撃証言を覆すため、捜査当局に当時の日記を提出した。エルゾーグ弁護士は、この日記にはサルコジ氏が厳しい警護を受けていた内務相時代以降の行動が細かく書かれており、ベタンクール氏の自宅で会合に出席するのは「物理的に不可能だった」という主張を証明するものだとしている。

■2度の現金引き出しに注目

 仏捜査当局は3月、複数の罪でベタンクール氏の側近だったパトリス・ドメストル(Patrice de Maistre)容疑者を起訴し、勾留を命じた。仏捜査当局は、ドメストル被告の代理人が、スイスの銀行口座から2度にわたって40万ユーロ(約4000万円)ずつ引き出したことに注目している。1度目の現金引き出しは2007年2月5日に行われ、その2日後にドメストル被告と当時サルコジ陣営の会計責任者だったエリック・ブルト(Eric Woerth)氏が会っていた。

 ブルト氏は後にサルコジ政権で労働相に就任したが、違法献金疑惑の捜査が進展した2010年に辞任し、警察は2011年にブルト氏の自宅と、サルコジ前大統領の支持母体だった政党、国民運動連合(UMP)の事務所を捜索した。ベタンクール氏の会計士、クレア・ティボー(Claire Thibout)氏は、2007年に複数回にわたってブルト氏に15万ユーロ(約1500万円)ずつ渡すよう頼まれたと証言している。

 2度目の疑わしい現金引き出しは、2007年大統領選第1回投票の4日後の2007年4月26日に行われた。サルコジ氏は同年5月6日に行われた決選投票で勝利し、大統領に就任した。(c)AFP