【6月20日 AFP】米国務省が19日に公表した185か国・地域の人身売買に関する2012年版報告書によると、世界で最大2700万人が現在も奴隷状態の下に暮らしていると推計される。

 報告書を発表したヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官は「残念なことに、米国その他の国の奴隷制度が撤廃されたことで、奴隷がなくなったわけではない。今日、世界で2700万もの男女、少年、少女が、時に人身売買と呼ばれる現代の奴隷制の犠牲となっている。彼らの身に起きていることは、人間が人間に対して極めて非人道的な扱いができるという事実を警告している」と述べた。

 またクリントン長官は、米国が奴隷解放宣言から今年150年を迎えるにあたり「これら(現代の)2700万人の犠牲者を全員解放するために、さらにどれだけ多くのことをする必要があるのか、皆がよく考えなければいけない」と語った。

■4段階評価で最高ランクはわずか33か国

 同報告書は対象国を4段階に分けて評価している。このうち2012年版で人身売買撤廃に関する法を完全に順守できているとする最上位の評価を受けた国は、185か国中わずか33か国だった。

 一方、アルジェリア、コンゴ民主共和国、リビア、北朝鮮、サウジアラビアなど16か国が最低評価にあたる「段階3」とされた。シリアも初めてこの最低ランクに下げられた。最低ランクの国は米国の援助を打ち切られたり、世界銀行(World Bank)や国際通貨基金(International Monetary FundIMF)などの機関から支援を受けようとする際、米国の支持を得られない可能性がある。

 前年この最低評価を受けた国のうち、ミャンマーとベネズエラなど5か国は評価をひとつ上げ、「段階2」と呼ばれる監視対象国42か国に加わった。ミャンマーは民政移行後の政権が、強制労働と児童兵士の徴用問題にかつてない多くの取り組みを行っており、その結果が早くも来年から現れそうだと評価された。

 同報告書は人身売買とは「自由を否定されること」であるとし、その自由には「どこにどのように住むかを選ぶ自由、働く自由あるいは働かないことを選ぶ自由、身体の不可侵性」などが含まれると述べている。(c)AFP/Jo Biddle