【6月14日 AFP】フランスの裁判所は12日、患者2人に偽のトラウマを植え付けた罪に問われていた心理療法士に、罰金5万ユーロ(約500万円)などの有罪判決を下した。

 アイデアの植え付けをテーマとしたハリウッド映画『インセプション(Inception)』をほうふつとさせるこの事件で、検察側は心理療法士のブノワ・ヤン・ティン(Benoit Yang Ting)被告(73)が何年にもわたる治療を通じて患者らに偽の記憶を植え付けた「ペテン師」だと糾弾した。

 ヤン・ティン被告には1年の執行猶予付き禁錮刑と罰金5万ユーロに加え、患者2人への賠償金15万ユーロ(約1500万円)の支払いが裁判所により命じられた。

 被害を受けた弁護士の女性と企業家の男性は、被告に対しそれぞれ23万8000ユーロ(約2400万円)と75万ユーロ(約7500万円)をこれまでに支払ったという。被告は1時間当たり320ユーロ(約3万2000円)の治療費を請求していた。

 被害者らは、抑圧された記憶を呼び起こすために服を脱いで裸になるよう指示されるなど、常軌を逸した治療セッションが行われていたと証言している。

 被害者の女性は、被告により性的虐待の偽の記憶を植え付けられたと話している。また被害者の男性は、まだ胎児だった時に母親から編み針で刺されていたという偽の記憶を呼び起こさせられたという。

 ヤン・ティン被告は健康上の理由により公判を欠席した。(c)AFP