【5月21日 AFP】1988年の米パンアメリカン(Pan Am)航空機爆破事件で唯一有罪判決を受け、末期がんを理由に2009年に釈放されリビアに帰国したアブデルバセト・アルメグラヒ(Abdelbaset Ali Mohmet Al-Megrahi)元受刑者(60)が20日、死亡した。

 兄弟のアブデルハキム・メグラヒ(Abdelhakim al-Megrahi)氏によると、亡くなったのは同日午後1時(日本時間同日午後8時)すぎだったという。

 英ロンドン(London)から米ニューヨーク(New York)に向かっていたパンアメリカン103便のボーイング747(Boeing 747)型機は、英国スコットランドのロッカビー(Lockerbie)上空で爆破され、搭乗していた259人全員と地上にいた11人の計270人が死亡した。乗客の大半は米国人だった。

 アルメグラヒ元受刑者は、スコットランドの裁判所で2001年に有罪判決を受けたが、前立腺がんで余命3か月と診断され、2009年に「温情措置」として釈放された。

 米国はこの釈放に強く反発した。米国家安全保障会議(National Security Council)のトミー・ビーター(Tommy Vietor)報道官は、アルメグラヒ元受刑者の死を「不幸な1章の終わり」と表現し、今後も故ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐による「恐ろしい行為」の完全解明に向けて、現在のリビア当局と協力していくと述べた。

■無実だったとの声も

 アルメグラヒ元受刑者の兄弟たちは、同元受刑者は無実だったにもかかわらずカダフィ政権の「スケープゴート」にされたと主張している。元受刑者を釈放しリビアに戻すという決定は、英国企業がまとめた大規模油田開発の交渉を円滑にするためだったとする声もある。

 アルメグラヒ元受刑者の死について、パンアメリカン機爆破事件の遺族の反応は分かれている。娘が犠牲になったスーザン・コーエン(Susan Cohen)さんは20日、米CNNテレビに「死は彼にふさわしい」と述べた。一方、娘が犠牲になったがアルメグラヒ元受刑者は無実だったと考えているジム・スワイア(Jim Swire)氏はBBCテレビに、「スコットランドはなぜ彼の判決をこれほど長い間見直そうとしないのかという大きな問いに答えるべきだ」と述べ、アルメグラヒ元受刑者に対する判決は覆されるだろうとの見方を示した。

 デービッド・キャメロン(David Cameron)英首相は20日、アルメグラヒ元受刑者は釈放されるべきではなかったと述べた一方、裁判は適切な手続きに従って行われたとして、同元受刑者の裁判について調査する考えはないという考えを示した。(c)AFP/Dominique Soguel

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