抗議の象徴になった「フーディー」、米黒人少年射殺事件
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【4月2日 AFP】ほんの数週間前まで、「フーディー(フード付きパーカー)」は米国の若者や休暇中の人々が好む衣料品の一種にすぎなかった。だが、2月末にフーディー姿のアフリカ系米国人の少年が白人自警団員に射殺された事件を受け、このありふれた衣類は今や議論の的と化し、抗議と怒りの象徴となった。
米フロリダ(Florida)州サンフォード(Sanford)で起きたトレイボン・マーティン(Trayvon Martin)さん(17)射殺事件後、全米各地では正義の実現を訴える抗議行動が相次ぎ、自警団員ジョージ・ジマーマン(George Zimmerman)氏(28)の逮捕と起訴を求めている。このデモ参加者の多くがフーディーを着用している。
前週には米下院の議場内で、ボビー・ラッシュ(Bobby Rush)議員がスーツの上着を脱ぎ捨て、中に着ていたフーディーのフードをかぶるとサングラスをかけて、「人種プロファイリング(人種による選別)はやめなければならない」と宣言。抗議行動としてこれまでで最大級の注目を集めた。
ラッシュ議員は「誰かがフーディーを着ているからといって、その人がフードラム(ごろつき)であるとは言えない」と訴えた後、議事堂内で議員が帽子を着用することを禁止した服装規定違反で退席させられた。
米カリフォルニア(California)州議員らも、州都サクラメント(Sacramento)でフーディーをかぶり、連邦政府に事件の徹底調査を行うよう要求した。
マーティンさんの事件によって、これまでにも繰り返されてきた米刑事司法制度内の人種問題をめぐる議論が再び活発になっている。
■フーディーが固定観念を刺激した?
ジマーマン氏は事件の際の警察への通報で、フーディー姿の黒人男性が「とても不審」に見えると述べているが、これについて多くのアフリカ系米国人や市民権運動指導者らは「人種プロファイリング」だと批判している。
米FOXニュース(Fox News)のコメンテーター、ジェラルド・リベラ(Geraldo Rivera)氏は、「ジョージ・ジマーマン氏がトレイボン・マーティンさんを殺したのが確かな事実であるのと同様に、フーディーがマーティンさんを殺したことに疑いはない」と述べ、マーティンさんの死は服装が原因だと主張。「有色人種の子ども」がフーディーを着ていると、ある種の「軽蔑」と「脅威」の感情を刺激するのだと論じた。
また、プリンストン大学(Princeton University)のエンジェル・ハリス(Angel Harris)准教授(社会学)は、マーティンさんが特に警戒された理由は肌の色だった可能性が高いが、フーディーも要因だったかもしれないと分析。AFPの取材に対し、「(フーディーは)都市部の黒人の若者を連想させるものになった」「黒人の若者がそういう服装をしていると、貧困率の高さや犯罪といった固定観念を呼び覚ます引き金になる」と説明した。
「固定観念や無意識の偏見をめぐるもっと大きな議論が必要だ」(ハリス氏)
■フーディーでなく「黒人」が原因
一方、ジョンズホプキンス大学(Johns Hopkins University)のレスター・スペンス(Lester Spence)助教は、フーディーが良い意味でも悪い意味でも世論の注目を集めているのは、視覚に訴えるアイテムなうえ、簡単に手に入るシンボルだからだと見る。
その上で、マーティンさんの事件において人種問題よりもフーディーに注目するのは短絡的に過ぎると指摘。「この事件は、そもそも服装の問題ではなかった。(ジマーマン氏が警察に)不審人物の通報をした際、問題にされていたのは黒人だという点だったのだ。その事実の後で、人種とフーディーの結びつけたのはわれわれだ」
スペンス氏は、「服装や様式面での特徴を取り上げ、何らかの意味付けをする行為には長い歴史があり、これもその中の1つだ」と述べ、1960年代のアフロ・ヘアや最近の腰ばきズボンなど、黒人と関連付けられたファッションやヘアスタイルが繰り返し攻撃されてきた例を挙げた。
■「フードは雨除け」
事件後、米国では多くのセレブたちが人種を問わず、フーディー姿で公の場に姿を現し、写真を撮影することによってジマーマン氏の逮捕を求める抗議運動への連帯を表明している。
米紙マイアミ・ヘラルド(Miami Herald)のコラムニスト、レオナルド・ピッツ(Leonard Pitts)氏は、フーディーに黒人を特徴付ける要素を見付けることはできなかったとして、次のように疑問を呈した。
「黒人も白人も、男性も女性も、若者から高齢者まで、大学生だってストリートキッズだって(フーディーを)着ている。マーティンさんはセブンイレブンから自宅への帰り道、小雨に降られたからフードを被ったんだ。今後は、傘以外を使うなと禁止するべきかい?」 (c)AFP/Stephanie Griffith
【関連記事】
・白人自警団員が黒人少年を射殺、全米に波紋
・フロリダ黒人少年射殺事件、起訴を求めてデモ
米フロリダ(Florida)州サンフォード(Sanford)で起きたトレイボン・マーティン(Trayvon Martin)さん(17)射殺事件後、全米各地では正義の実現を訴える抗議行動が相次ぎ、自警団員ジョージ・ジマーマン(George Zimmerman)氏(28)の逮捕と起訴を求めている。このデモ参加者の多くがフーディーを着用している。
前週には米下院の議場内で、ボビー・ラッシュ(Bobby Rush)議員がスーツの上着を脱ぎ捨て、中に着ていたフーディーのフードをかぶるとサングラスをかけて、「人種プロファイリング(人種による選別)はやめなければならない」と宣言。抗議行動としてこれまでで最大級の注目を集めた。
ラッシュ議員は「誰かがフーディーを着ているからといって、その人がフードラム(ごろつき)であるとは言えない」と訴えた後、議事堂内で議員が帽子を着用することを禁止した服装規定違反で退席させられた。
米カリフォルニア(California)州議員らも、州都サクラメント(Sacramento)でフーディーをかぶり、連邦政府に事件の徹底調査を行うよう要求した。
マーティンさんの事件によって、これまでにも繰り返されてきた米刑事司法制度内の人種問題をめぐる議論が再び活発になっている。
■フーディーが固定観念を刺激した?
ジマーマン氏は事件の際の警察への通報で、フーディー姿の黒人男性が「とても不審」に見えると述べているが、これについて多くのアフリカ系米国人や市民権運動指導者らは「人種プロファイリング」だと批判している。
米FOXニュース(Fox News)のコメンテーター、ジェラルド・リベラ(Geraldo Rivera)氏は、「ジョージ・ジマーマン氏がトレイボン・マーティンさんを殺したのが確かな事実であるのと同様に、フーディーがマーティンさんを殺したことに疑いはない」と述べ、マーティンさんの死は服装が原因だと主張。「有色人種の子ども」がフーディーを着ていると、ある種の「軽蔑」と「脅威」の感情を刺激するのだと論じた。
また、プリンストン大学(Princeton University)のエンジェル・ハリス(Angel Harris)准教授(社会学)は、マーティンさんが特に警戒された理由は肌の色だった可能性が高いが、フーディーも要因だったかもしれないと分析。AFPの取材に対し、「(フーディーは)都市部の黒人の若者を連想させるものになった」「黒人の若者がそういう服装をしていると、貧困率の高さや犯罪といった固定観念を呼び覚ます引き金になる」と説明した。
「固定観念や無意識の偏見をめぐるもっと大きな議論が必要だ」(ハリス氏)
■フーディーでなく「黒人」が原因
一方、ジョンズホプキンス大学(Johns Hopkins University)のレスター・スペンス(Lester Spence)助教は、フーディーが良い意味でも悪い意味でも世論の注目を集めているのは、視覚に訴えるアイテムなうえ、簡単に手に入るシンボルだからだと見る。
その上で、マーティンさんの事件において人種問題よりもフーディーに注目するのは短絡的に過ぎると指摘。「この事件は、そもそも服装の問題ではなかった。(ジマーマン氏が警察に)不審人物の通報をした際、問題にされていたのは黒人だという点だったのだ。その事実の後で、人種とフーディーの結びつけたのはわれわれだ」
スペンス氏は、「服装や様式面での特徴を取り上げ、何らかの意味付けをする行為には長い歴史があり、これもその中の1つだ」と述べ、1960年代のアフロ・ヘアや最近の腰ばきズボンなど、黒人と関連付けられたファッションやヘアスタイルが繰り返し攻撃されてきた例を挙げた。
■「フードは雨除け」
事件後、米国では多くのセレブたちが人種を問わず、フーディー姿で公の場に姿を現し、写真を撮影することによってジマーマン氏の逮捕を求める抗議運動への連帯を表明している。
米紙マイアミ・ヘラルド(Miami Herald)のコラムニスト、レオナルド・ピッツ(Leonard Pitts)氏は、フーディーに黒人を特徴付ける要素を見付けることはできなかったとして、次のように疑問を呈した。
「黒人も白人も、男性も女性も、若者から高齢者まで、大学生だってストリートキッズだって(フーディーを)着ている。マーティンさんはセブンイレブンから自宅への帰り道、小雨に降られたからフードを被ったんだ。今後は、傘以外を使うなと禁止するべきかい?」 (c)AFP/Stephanie Griffith
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