【3月28日 AFP】米カリフォルニア(California)州の警察当局は26日、イラク系米国人の女性が自宅で何者かに激しく殴打され死亡した事件について、憎悪・偏見に基づく犯罪(ヘイトクライム)の可能性も含めて捜査を進めていると発表した。米国務省も理不尽な暴力は断固許さないとの姿勢を示している。

 死亡したのは5児の母親であるシャイマ・アラワディ(Shaima Alawadi)さん(32)。サンディエゴ(San Diego)から15マイル(約24キロ)東に位置するエルカホン(El Cajon)の自宅で21日、意識を失っているところを10代の娘ファティマ・ヒミディ(Fatima Al Himidi)さんが発見し、搬送先の病院で24日に生命維持装置のスイッチが切られた。

 地元警察当局のジム・レッドマン(Jim Redman)署長は26日、被害者家族の住む家の窓が割られていることを明らかにし、シャイマさんのそばに置かれていたメモについても確認したと述べ、「メモの内容は現時点では公開しないが、脅迫的な内容であるため、ヘイトクライムの可能性を除外しない」とした。

 ただ同署長は、捜査がまだ初期段階で他にも検証中の証拠があると述べ、ヘイトクライムについては1つの考え方としながら、現時点ではいかなる結論も出ていないことを強調した。

 報道によるとシャイマさん一家は1990年代半ばにイラクから移住したという。母親の遺体を発見したファティマさんはCNN系列のKGTVに対し、事件発生の1週間前にも、「ここはわれわれの国。おまえらテロリストのものじゃない」と書かれていたメモが残されていたことを明らかにした。またこれを見た母親が単に子どものいたずらと考え、真剣に取り合わなかったことについても触れた。

「犯人は、事件当日にも同じ内容のメモを残していった」(娘のファティマさん)

 米国務省は遺族に対し「心から遺憾の意」を表明し、シャイマさんを「極めてひどい暴行を受けた末、…(中略)死亡したイラク系米国人」と表現した。

 米国務省のビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)報道官は「米国当局は現在この残酷な事件について捜査中で、加害者を法の裁きにかけるために全力で取り組んでいると理解している」と述べ「当局は犯行の動機についても調査しているが、米国はこのような理不尽な暴力は断固許さない」と続けた。

 一方イラクのホシヤル・ジバリ(Hoshyar Zebari)外相は、「イラク政府は、被害者の遺体をカリフォルニアからバグダッドへ移送するよう指示した」と述べたが、それ以上の詳細については明らかにしなかった。(c)AFP