【1月5日 AFP】1993年に英ロンドン(London)で18歳の黒人少年が殺害された事件で、英中央刑事裁判所は4日、当時10代だった白人のゲーリー・ドブソン(Gary Dobson)被告(36)とデービッド・ノリス(David Norris)被告(35)に、それぞれ禁錮15年2月以上と同14年3月以上を言い渡した。2人には前日、有罪評決が出ていた。

 この事件は、ロンドン南東部エルタム(Eltham)のバス停でバスを待っていたスティーブン・ローレンス(Stephen Lawrence)さん(当時18)が白人少年グループに襲われ、刺殺されたもの。ドブソン被告(当時17)とノリス被告(当時16)は、事件発生当時の捜査で容疑者として逮捕された5人の中に含まれていたが、不起訴となっていた。

 だが、その後、警察内の「組織的な人種偏見」から初動捜査が適切に行われなかった事実が判明。再捜査で当時の検視技術では不可能だった鑑定の結果、両被告の関与が明らかになった。

■「英国の良心損なった」人種差別犯罪

 この事件をめぐっては、警察の機能不全や統率力不足、組織的な人種偏見などへの批判が高まり、大々的な警察組織の改革につながった。

 4日、満員の法廷で判決文を読み上げたコールマン・トレーシー(Colman Treacy)判事は、事件について「人種的な憎悪」だけが動機の「凶悪で悪意に満ちた犯罪」であり、「英国の良心を損なった」と述べた。

 ローレンスさんの父親ネビル(Neville Lawrence)さんは、判決を歓迎しながらも「長い長い道のりの、まだ1歩に過ぎない」と語った。一方、母親のドリーン(Doreen Lawrence)さんは、判決は「軽すぎる」と述べつつ、事件当時に両被告が未成年だった点には理解を示した。仮に事件発生時に成人だった場合、量刑は禁錮30年に相当する。

 ロンドン警視庁のバーナード・ホーガン=ハウ(Bernard Hogan-Howe)警視総監は残る3人の容疑者についても「ベッドの上で安眠させるわけにはいかない」と述べ、捜査の継続を約束した。(c)AFP