英首相、「壊れた社会」の修復に米スーパーコップ抜擢
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【8月15日 AFP】英国で前週発生した暴動を受け、不良グループなどによる暴力事件に対処するため米国の「スーパーコップ」を抜擢する方針をデービッド・キャメロン(David Cameron)首相が表明し、英国警察の反発を招いている。
ロンドン(London)など主要都市で4日間続いた暴動では5人が死亡した。五輪開催を1年後に控え、原因や対策について英国全土で議論が巻き起こっている。
キャメロン首相は15日、暴動の原因に「モラルの崩壊」を挙げる演説を行う。事前に発表された演説原稿によると、首相は「壊れた社会を修復する」ために一歩たりとも立ち止まるつもりはないと約束。暴動は「わが国への警鐘」だと述べ、「何が失敗だったのかは分かっている。問題は、国の一部と一部世代でゆっくりと進むモラルの崩壊に立ち向かう決意ができるかだ」と語る。
また、前代未聞の混乱の原因として「無責任、身勝手さ、母子家庭の子ども、規律のない学校、努力によらない報償、責任を伴わない権利」を挙げる。
■米国式導入に英警察反発、政府の「一貫性なさ」批判
これに先だってキャメロン首相は、元ニューヨーク市警トップでニューヨークやロサンゼルス(Los Angeles)、ボストン(Boston)の犯罪組織の取り締まりで成果を上げたビル・ブラットン(Bill Bratton)氏を抜擢し、暴力事件に「ゼロ・トレランス(不寛容主義)」で対応する方針を表明した。
テレサ・メイ(Theresa May)内相も、国民は「断固たる対応」を求めていると述べ、キャメロン首相の方針を支持した。
ただ、英警察幹部からは、国内の問題には国内で培われた対策で臨むのが好ましいとして、首相への反発の声が相次いでいる。暴動対応の遅さを首相から非難されている英警察は既に、緊縮財政策を推し進めるキャメロン政権の警察予算削減案をめぐり、首相に強い不快感を抱いていた。
英国幹部警察官協会(Association of Chief Police Officers、ACPO)のヒュー・オード(Hugh Orde)会長は、「400もの犯罪組織がある米国の1地域から、犯罪グループについて学びたいかと言われれば、確信は持てない」と、日曜紙インディペンデント・オン・サンデー(Independent on Sunday)に語った。
ロンドン警視庁のティム・ゴッドウィン(Tim Godwin)警視総監代理も、2009年の主要20か国・地域(G20)首脳会議でのデモの際には警察の高圧的な対応に批判が集中したことを指摘し、暴動に対して警察がどの程度厳しく対処すべきかについて「政府の方針に一貫性がない」と批判した。
■「ゼロ・トレランスは好まない」とブラットン氏
一方、「ゼロ・トレランス」を掲げて成功を収めてきたブラットン氏は、不寛容主義について「私はこの表現を好まない」と語る。
同氏は英日曜紙メール・オン・サンデー(Mail on Sunday)への寄稿で、「どの国に対してであれ、ゼロ・トレランスの採用を勧めはしない。達成不可能だからだ。この言葉には、まるで問題を根絶できるかのような響きがあるが、現実は違う」と指摘。むしろ、犯罪組織の仕組みを理解することや、その活動を抑え込む強制措置を取るなどの複数の対策を提示した。(c)AFP/James Pheby
ロンドン(London)など主要都市で4日間続いた暴動では5人が死亡した。五輪開催を1年後に控え、原因や対策について英国全土で議論が巻き起こっている。
キャメロン首相は15日、暴動の原因に「モラルの崩壊」を挙げる演説を行う。事前に発表された演説原稿によると、首相は「壊れた社会を修復する」ために一歩たりとも立ち止まるつもりはないと約束。暴動は「わが国への警鐘」だと述べ、「何が失敗だったのかは分かっている。問題は、国の一部と一部世代でゆっくりと進むモラルの崩壊に立ち向かう決意ができるかだ」と語る。
また、前代未聞の混乱の原因として「無責任、身勝手さ、母子家庭の子ども、規律のない学校、努力によらない報償、責任を伴わない権利」を挙げる。
■米国式導入に英警察反発、政府の「一貫性なさ」批判
これに先だってキャメロン首相は、元ニューヨーク市警トップでニューヨークやロサンゼルス(Los Angeles)、ボストン(Boston)の犯罪組織の取り締まりで成果を上げたビル・ブラットン(Bill Bratton)氏を抜擢し、暴力事件に「ゼロ・トレランス(不寛容主義)」で対応する方針を表明した。
テレサ・メイ(Theresa May)内相も、国民は「断固たる対応」を求めていると述べ、キャメロン首相の方針を支持した。
ただ、英警察幹部からは、国内の問題には国内で培われた対策で臨むのが好ましいとして、首相への反発の声が相次いでいる。暴動対応の遅さを首相から非難されている英警察は既に、緊縮財政策を推し進めるキャメロン政権の警察予算削減案をめぐり、首相に強い不快感を抱いていた。
英国幹部警察官協会(Association of Chief Police Officers、ACPO)のヒュー・オード(Hugh Orde)会長は、「400もの犯罪組織がある米国の1地域から、犯罪グループについて学びたいかと言われれば、確信は持てない」と、日曜紙インディペンデント・オン・サンデー(Independent on Sunday)に語った。
ロンドン警視庁のティム・ゴッドウィン(Tim Godwin)警視総監代理も、2009年の主要20か国・地域(G20)首脳会議でのデモの際には警察の高圧的な対応に批判が集中したことを指摘し、暴動に対して警察がどの程度厳しく対処すべきかについて「政府の方針に一貫性がない」と批判した。
■「ゼロ・トレランスは好まない」とブラットン氏
一方、「ゼロ・トレランス」を掲げて成功を収めてきたブラットン氏は、不寛容主義について「私はこの表現を好まない」と語る。
同氏は英日曜紙メール・オン・サンデー(Mail on Sunday)への寄稿で、「どの国に対してであれ、ゼロ・トレランスの採用を勧めはしない。達成不可能だからだ。この言葉には、まるで問題を根絶できるかのような響きがあるが、現実は違う」と指摘。むしろ、犯罪組織の仕組みを理解することや、その活動を抑え込む強制措置を取るなどの複数の対策を提示した。(c)AFP/James Pheby