【7月22日 AFP】廃刊となった英日曜大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド(News of the WorldNOTW)」をめぐる電話盗聴スキャンダルで、メディア王ルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏の息子ジェームズ・マードック(James Murdoch)氏が英下院委員会で行った証言が事実と異なるとの指摘が関係者から浮上し、真偽を追及する声が高まっている。

 一方、当局の捜査は私立探偵を雇って情報収集を行っていた英国内の他紙にも広がり、一連のスキャンダルは拡大の一途をたどっている。

■下院委員会で「誤った証言」

 NOTW発行元だった英ニューズ・インターナショナル(News International)の会長を務めるジェームズ氏は19日、マードック氏とともに英下院委員会での証人喚問に出席。NOTWの複数の記者が盗聴に関与していた証拠があったことを「知らなかった」と証言した。

 この証拠は、2008年にイングランド・プロサッカー選手協会(PFA)のゴードン・テイラー(Gordon Taylor)会長が同社を訴えた盗聴事件に関し、盗聴に複数の記者が関与したことを示唆する社内電子メール。訴訟は、ニューズ・インターナショナルがテイラー氏に和解金を支払い示談となっている。

 これに対し、NOTW元編集者のコリン・マイラー(Colin Myler)氏と、事件当時ニューズ・インターナショナルの弁護士だったトム・クローン(Tom Crone)氏は21日、ジェームズ氏がこの和解金支払いを承認する際、問題のメールについて警告を受けていたとして、「証人喚問におけるジェームズ・マードック氏の回想は間違いだと指摘したい」と発表した。

■スキャンダルは他紙に拡大

 捜査当局の目は、今や他紙にも向けられているようだ。

 個人情報保護を目的とする政府機関、英情報コミッショナー事務局(Information Commissioner's OfficeICO)はAFPに対し、英各紙による私立探偵を使った情報収集に関する2006年のICO調査報告について、警察から3か月前に照会があったことを明らかにした。

 この調査では、英大衆紙デーリー・メール(Daily Mail)が952件、英芸能誌ピープル(The People)が802件、大衆紙デーリー・ミラー(Daily Mirror)681件、同メール・オン・サンデー(Mail on Sunday)が266件の個人情報収集を私立探偵に依頼したことが分かった。今回のスキャンダルの発端となったNOTWは、5番目に多い228件だった。

 AFPの取材にデーリー・メール広報は、同紙発行元のアソシエーテッド・ニューズペーパーズ(Associated Newspapers)では2006年以降、私立探偵を使った取材は禁止していると回答した。(c)AFP