【5月30日 AFP】中国・内モンゴル(Inner Mongolia)自治区当局は30日、モンゴル族住民による新たな反政府デモに対する警戒を強めている。

 モンゴルと国境を接する同自治区では今月10日、漢族の男が運転するトラックにモンゴル族の遊牧民、メルゲン(Mergen)さんがひき殺されるという事件が発生した。この事件をきっかけにモンゴル族の住民の間で鬱積(うっせき)していた中国による抑圧に対する不満が噴出し、デモが相次いでいる。

 メルゲンさんは内モンゴル自治区のシリンゴル(Xilingol)で、炭鉱開発へ向かうトラックの一団を阻止しようとしたグループの1人だった。炭鉱開発によって地域に流入した多数の労働者が遊牧民を追放し、牧草地を破壊した上、家畜を殺すなどしたため、遊牧民の間では怒りが渦巻いていた。シリンゴル当局は、メルゲンさん殺害と牧草地の破壊の容疑で4人を逮捕したと発表している。

 AFP特派員や人権団体によると、自治区内の複数の都市で大学や公共広場が封鎖されている。中東各地の反体制デモをまねて全国規模の抗議行動を起こそうという呼び掛けがインターネット上で飛び交っていることに神経を尖らせている当局が、いっそう警戒を強めている証拠だろう。

 当局は、2008年のチベット自治区(Tibet)、2009年の新疆ウイグル(Xinjiang Uighur)自治区に続く少数民族による大規模な暴動に発展する可能性も恐れているはずだ。

 この1週間でモンゴル自治区内各地では数千人規模の人がデモに繰り出している。米国に拠点がある南モンゴル人権情報センター(Southern Mongolian Human Rights Information Centre)の最新の情報によると、28日には赤峰(Chifeng)市で学生と遊牧民ら数百人がデモを行ったが、機動隊と軍の兵士が即座にデモを解散させた。(c)AFP/Dan Martin