【5月30日 AFP】中国東部の江西(Jiangxi)省撫州(Fuzhou)市の市関連庁舎3か所で26日起きた連続爆発事件は、土地争いで不満をため込んだ無職の地元男性の犯行とみられ、権利を踏みにじられたと感じる中国人の多くが絶望感に押しつぶされそうになっている現実をまざまざと知らしめた。

 中国では、司法制度に対する市民の不信感が高まっており、さらなる暴力事件の発生も懸念されている。

■「自らの手で正義を・・・」

 撫州市で自動車爆弾と手榴弾で爆発を起こし2人を殺害、自身も死亡した銭明奇(Qian Mingqi)容疑者は事件前、マイクロブログに次のように記していた。「10年間、ひどい不正に苦しんできた。正義を見つけることができない。望まない道へ進まざるを得なかった」「自らの手で、具体的な行動で、わたしは正義を実現する」

 中国のニュースサイト、チャイナ・ビジネス・ニュース(China Business News)によると、銭容疑者は1995年、高速道路建設を理由に自宅を立ち退かされ、引っ越した先の新たな自宅も2001年に、同じ高速道路の延長工事のため解体されたという。

 銭容疑者のマイクロブログには、過去半年にわたって約300件の怒りの言葉がつづられていた。立ち退き補償金を地元共産党幹部に中間搾取されたことなどを訴え、「200万元(約2500万円)ほど失った」と述べていた。

■改革進む法制度、市民の期待との間にズレ

 不透明で無責任だと批判される中国の法制度については、改革が進められている。だが、専門家によると市民の認識ではそれらの改革はまるで不十分で、法の支配はもはや保証されていないとみなされている。

「矛盾しているようだが、(中国の)司法制度はますます近代化されつつある」と、北京(Beijing)を拠点に中国法制度を研究する仏学者、ステファニー・バルム(Stephanie Balme)氏はAFPの取材に語った。同氏によると、過去20年で中国の弁護士数は300人から13万人に急増した。

 ただ、「市民が取れる法的手段が増えたことで、市民の期待と、改革途上にある法制度との間に格差が生じている」という。現行法制度では市民の期待に応えられていないことが問題なのだ。

 中国では2週間前にも、北西部の甘粛(Gansu)省で解雇された元銀行員が銀行に火炎瓶を投げ込み、40人以上が負傷する事件があった。また、前年9月には今回の事件と同じ撫州市で、やはり土地問題をめぐる抗議行動で3人が自分に火をつけ、うち1人が死亡する事件が起きている。

「当局は、市民が不満を敵対的行動や暴力に発展させる前に、より簡単に不満を訴えることができる窓口を開設する必要がある」と、中国人民大学(Renmin University)行政管理学部の毛寿龍(Mao Shoulong)主任は中国国営英字紙・環球時報(Global Times)に指摘している。(c)AFP/Pascale Trouillaud

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