【5月18日 AFP】(写真追加)国際通貨基金(IMF)専務理事のドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)容疑者の逮捕を受け、16日から2日間の日程で行われた欧州連合(EU)のユーロ圏財務相会合では早くも、IMFの後任を引き続き欧州の手の内に収めておこうという動きが見られた。

 ストロスカーン容疑者は14日、米ニューヨーク(New York)で、ホテルの女性従業員に対する性的暴行と強姦未遂などの容疑で逮捕され、現在ニューヨーク州ライカーズ島(Rikers Island)にある留置施設に収容されている。

 ユーロ圏は過去1年間にギリシャ、アイルランド、ポルトガルと、たて続けに深刻な財政危機に陥り、IMFからの金融支援を受けた。EUでは、ストロスカーン容疑者が欧州出身者だったことで、ユーロ危機に対する理解が得られたという認識がある。さらに、いまだ続くユーロ危機から脱するために、「(ストロスカーン容疑者からの)交代が必要なのであれば、EU加盟国はそれぞれ候補を立てるべきだ」というのがジョゼ・マヌエル・バローゾ(Jose Manuel Barroso)欧州委員会委員長の意見だ。

 しかし、今回の事件が起こる以前からストロスカーン容疑者は、2012年の仏大統領選での有力候補とみなされていたため、すでにドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相などはIMF専務理事の後任について言及していた。

 名前が挙がっている1人は、フランスのクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)経済・産業・雇用相だ。欧州各国はニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領が正式に推薦するまでは静観するつもりだが、南ドイツ新聞(Suddeutsche Zeitung)はラガルド氏がドイツと英国の支持を取り付けられるだろうと報じている。またドイツでは、ドイツ銀行(Deutsche Bank)総裁のヨーゼフ・アッカーマン(Josef Ackerman)氏も挙がっている。

 英国のゴードン・ブラウン(Gordon Brown)前首相(労働党)は長年、ストロスカーン容疑者の後任に意欲的とされてきたが、IMF専務理事を推薦できるのは各国元首か政府に限定され、保守党のデービッド・キャメロン(David Cameron)現英首相はすでにブラウン氏を推薦しない意向を表明しているため、ブラウン氏就任のシナリオはないだろう。

■欧米分権に割り入りたい新興国、ユーロ危機盾に守る欧州

 一方で近年では、IMF専務理事を欧州出身者が、世界銀行の総裁を米国出身者が務めるという慣例を見直す時代が来たとの主張が、新興国の間から挙がっている。中国外務省の姜瑜(Jiang Yu)副報道局長は17日、米ダウジョーンズ・ニュースワイヤーズ(Dow Jones Newswires)に対し、IMF専務理事への各国からの推薦には公正性と透明性が必要だと語った。

 新興国出身の候補を立てようという動きが強まれば、トルコ財務相としてIMFの救済措置を受け、同国経済を急成長に転換させた経験のあるケマル・デルビシュ(Kemal Dervis)国連開発計画(UNDP)元総裁が有力候補の筆頭に挙がる。

 メルケル独首相も、IMFトップの座を新興国が求めるのは妥当なことだと理解は示すが、一方でユーロ危機下という状況では、欧州から優秀な人材をあてるほうが適切だと譲らない。

 ストロスカーン容疑者の逮捕を受け、IMF専務理事はジョン・リプスキー(John Lipsky)筆頭副専務理事が代行しているが、彼もまた8月31日をもって辞任する意向を事件の前に発表していた。IMFは現在、短期間にトップ2人を置き換えなければならないという難問に直面している。(c)AFP/Roddy Thomson