【3月31日 AFP】中国当局は30日、麻薬密輸罪で死刑判決が確定したフィリピン人3人の処刑を執行した。

 3人に対する死刑宣告はカトリック教国であるフィリピンで非難を巻き起こした。フィリピン政府は繰り返し中国側に減刑を求めていたが拒否され、最後の奇跡を願う支援者たちは前夜、首都マニラ(Manila)で夜通し祈りを捧げるしかなかった。

 フィリピンのエドウィン・ラシエルダ(Edwin Lacierda)大統領報道官は、「わが政府は可能なあらゆる手立てを尽くして、中国政府に寛大な措置を訴えたが、刑はついに執行された」と声明を発表した。

 中国政府は公式発表をいっさい行っていない。

 ラシエルダ報道官によると、ラモン・クレド(Ramon Credo)死刑囚(42)、サリー・ビリャヌエバ(Sally Villanueva)死刑囚(32)、エリザベス・バタイン(Elizabeth Batain)死刑囚(38)は30日午前、薬物注射によって処刑された。

 3人は2008年、ヘロインを密輸しようとして中国で逮捕され、その後、死刑を宣告されていた。フィリピン政府は、3人は麻薬組織にだまされて密輸をさせられた被害者だと訴えていた。

 処刑の1時間前、3人には親族との面会が許されたが、絶望にあふれた会見だったと言う。

 ビリャヌエバ死刑囚の兄弟、ジェイソン・オルディナリオさんは両親・女兄弟と共に福建(Fujian)省アモイ(Xiamen)の裁判所で最終判決に立ち会い、死刑直前に会見した。オルディナリオさんは中国からフィリピンのラジオ局DZBBに「彼女は泣いていた。何を言っているか分からない時もあった。たくさん言いたそうなことがあった。最後は子どもの世話を頼むと言い、ちゃんと学校を出るようにしてくれと頼まれた」と語った。

 ビリャヌエバ死刑囚の親族によると、同死刑囚は自分が30日に死刑になることを知らなかった様子で、家族が来ているのを見て驚いていたと言う。ビリャヌエバ死刑囚の9歳と12歳の子どもは中国へ行かず、中国当局が面会室で携帯電話の使用を許可しなかったため、母親の処刑前に会うことも話すこともできなかった。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は中国の死刑執行を批判し、またフィリピンのベニグノ・アキノ(Benigno Aquino)政権も3人の救命のために十分動かなかったと非難した。また、3人のための祈りを呼び掛けたフィリピンのカトリック教会の幹部たちも、中国当局に対して怒りを表明した。(c)AFP/Jason Gutierrez

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