【2月15日 AFP】刑事事件の被疑者になったことのある人物は、仮に刑務所に入らなかった場合でも、自殺率が高い傾向を示すという研究結果が14日、米国医師会(American Medical AssociationJAMA)の精神医学専門誌「アーカイブズ・オブ・ゼネラル・サイキアトリー(Archives of General Psychiatry)」に掲載された。

 論文を発表したのはマンチェスター大学(University of Manchester)のロジャー・ウェッブ(Roger Webb)氏ら英国の研究チーム。デンマークで1981~2006年の間に自殺した2万7219人と、対照群としてこれと年齢や性別が合致する生存中の52万4899人を比較し、さらに犯罪者記録と照合して1980年以降に刑事事件の被疑者になったことのある人物と自殺の関係性を調べた。

 その結果、自殺の危険性が最も高かったのは、禁固刑で収監されたことのあるグループだった。特に「犯罪歴のある中でも年齢が低く、暴力行為で罪を問われ、刑事司法制度と接触したのが最近か、または繰り返し接触している人物が、最も自殺の危険性が高かった」という。また判決で精神病治療を命じられた場合や、執行猶予となった場合に最も自殺リスクとの相関性が強かった。

 男女別に見ると、刑事司法制度に接触したことのある男性は、対照群では24.6%だったが、自殺したグループでは34.8%に上った。また女性の場合も、対照群では全体の5.1%だったが、自殺した女性では12.8%に上った。

 さらに研究チームは、刑事司法制度に接触したことのない人と比較して、接触したことのある人びとは「禁固刑や有罪判決を言い渡されなかった場合でも」自殺する危険性が高まると判断した。

 論文によると自殺の危険性は、刑事司法制度との接触回数が増えるほど高まり、また接触が最近であればあるほど高い傾向があった。そのため研究チームでは、そうした傾向は刑事司法制度と接触する人の性質や性格を反映したものではなく、刑事司法制度との接触自体が自殺リスクの上昇に影響している可能性があると指摘した。(c)AFP