【12月6日 AFP】内部告発サイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」によって6日までに、イラクのサダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領の死刑執行当日の詳細な状況を記した米外交公電が明らかになった。

 2006年12月に執行されたフセイン元大統領の死刑をめぐっては、執行直前に立会人らがフセイン氏をののしる様子などを携帯電話で撮影した動画が刑の執行の直後にインターネットに流出し、国際的な論争が巻き起こった。

 新たにリークされた2007年1月の「機密(SECRET)」扱いの公電の中で、ザルメイ・ハリルザド(Zalmay Khalilzad)駐イラク米大使(当時)は、裁判は公正に行われたが、フセイン氏の支持者らが死刑執行のずさんさを利用して裁判を批判するだろうと述べている。

 また、ハリルザド氏がイラクの検察官、マンキトゥ・ファルーン(Monqith al-Faroun)氏から聞いた話として、フセイン氏を死刑執行台に連行していた警備員が、フセイン氏に「地獄におちろ」と言ったことなどが記されている。この警備員は後に訓戒処分を受けた。

 ファルーン検察官によると、刑場に来ていたイラク政府高官らは、携帯電話の持ち込みが禁止されていたにもかかわらず、堂々と携帯電話のカメラで写真を撮影していたという。

■立会人がシーア派指導者の名を連呼

 フセイン氏は絞首刑による死刑執行を前に最後の祈りを捧げていた。立会人の1人は、「ムクタダ、ムクタダ、ムクタダ」と、フセイン氏の失脚後に脚光を浴びたイスラム教シーア(Shiite)派反米指導者ムクタダ・サドル(Moqtada al-Sadr)師の名前を連呼したという。

 携帯電話で撮影された死刑執行の動画はインターネットでまたたく間に広がり、バグダッド(Baghdad)の路上では執行後の数日間にわたって販売された。

 流出した動画の中でフセイン氏は、怒りに満ちていたが落ち着いた表情をして、暗い部屋の鉄製の台に乗っている。手は縛られ、首には麻縄が巻き付けられていた。人びとの話し声なども聞こえる。鉄製の扉が足もとで開き、フセイン氏の死刑が執行される直前には「ムクタダ、ムクタダ、ムクタダ」との声も聞こえる。

 公電によると立会人のリストは「執行前に数回変更され、一時は20~30人が含まれていた」という。公電は「イラク政府には立会人の管理と死刑の執行について明確で組織的な計画がなく、死刑執行はおざなりで混乱した出来事になった」としている。(c)AFP

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