【9月4日 AFP】フィリピンのマニラ(Manila)で香港からの観光客を乗せた観光バスが武装した元警察官に乗っ取られ、人質8人が死亡した事件で、事件を監督する立場にあったマニラ市長と副市長が、犯人が交渉を拒絶して発砲を始めた直後に、事件の指令本部を立ち去りレストランなどに行っていたことが明らかになった。

 事件で警察の不手際があったとの批判が高まったことを受けて、フィリピンのベニグノ・アキノ(Benigno Aquino)大統領は、ライラ・デリマ(Leila de Lima)法相を委員長とする政府の閣僚級調査委員会を設置。4日に聴聞会に出席したイスコ・モレノ(Isko Moreno)副市長は、同氏とマニラ市長のアルフレド・リム(Alfredo Lim)氏が23日夕方、バス乗っ取り犯が警察との交渉を止めて警告の発砲を始めた直後に、警察の人質事件の指令本部を立ち去ったと証言した。

 委員会の激しい言い合いの中で、モレノ氏は「どうすればよかったんだ?弾丸に当たりに行けと?」と言い返した。

 モレノ氏は、丸1日におよぶ平和的解決の取り組みが行き詰まったことに苛立ち、そばのホテルに行ってコーヒーを飲みながら、テレビの生中継で救助作戦を眺めていたという。

 3日に証言したリム市長によれば、同氏とモレノ副市長は、事件解決に市が設置した「危機管理委員会」の委員長と副委員長を務めていた。

 デリマ法相は聴聞会で、バスで殺害が起きる前の決定的に重要な時間帯に、事件対応のトップらが意思決定を地元警察に委ねたという印象を持つと語り、「決定的な瞬間にリム市長(がレストランに)、それにあなたは(ホテルに)出かけた」と述べた。

 また、政府調査委員会メンバーのジェシー・ロブレド(Jesse Robredo)内務・自治相も、「状況解決の責任を全面的に警察に任せたようにみえる」と語った。

■続々と驚きの証言

 3日の聴聞会では、フィリピンの警察長官が事件の最中にマニラを立ち去っていたことや、1時間もかかったバス突入作戦に、もっとも訓練された部隊が参加しなかったことなど、警察や政府の多数の不手際やミスが次々と明らかになった。

 バス乗っ取り事件を起こしたのは、解雇された警察への復職を要求する元警察官のロランド・メンドーサ(Rolando Mendoza)容疑者(55)。人質救出に警官隊がバスに突入し、人質が殺害されたこの事件は、世界各地で生中継された。

 政府の調査委員会は6日まで聴聞会を開く。(c)AFP

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