米国で逮捕されたロシア諜報員、まるで冷戦時代のスパイ映画
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【6月29日 AFP】米連邦捜査局(FBI)が米国内でロシアのスパイとして活動していた10人を逮捕し1人の行方を追っている事件は、冷戦時代のスパイ映画の様相を呈している。
米司法省の文書には逃亡中の1人を含む11人が、米国人やカナダ人に成りすまして米国社会に溶け込み、長期間にわたってロシア対外情報局(SVR)のために諜報活動を行っていた様子が詳細に記されている。ロシア対外情報局は、ソ連時代の国家保安委員会(KGB)の後身組織にあたる。
■スパイ映画ばりの活動
FBIは容疑者らの自宅には盗聴器、車には衛星利用測位システム(GPS)を仕掛けたほか、容疑者らが利用するレストランやホテルの客室などにも隠しカメラを設置し、秘密裏に彼らの行動や電子メール、電話の通話を監視してきた。
こうした監視記録の中には2000年にまでさかのぼるものもあり、今回、身柄を確保した何人かについて、米当局が早い段階からロシアの諜報員であることを把握していた事実を物語る。
諜報員のうち数人は1990年代前半~半ばに夫婦を装って米国に入り、ロシアとの関連をすべて隠した上で対外情報局の本部を意味する「モスクワ・センター」からの指示に従ってスパイ活動を続けていた。
米司法省の文書によると、容疑者らはさまざまな機会をとらえて駐米ロシア高官から活動費を受け取っていた。こうした高官の中には、ニューヨーク(New York)の国連(UN)本部に勤務するロシア人職員も含まれていたという。
2006年6月には容疑者の2人がニューヨーク州ワーツボロ(Wurtsboro)に向かい、仲間がその2年前に地中に埋めていた活動資金を掘り起こしたとの記録もある。
■先端技術を駆使して通信
また容疑者達はさまざまな手段を使ってモスクワ・センターと連絡を取っていた。
そのひとつ、ステガノグラフィーは、一般に公開されているウェブサイトに掲載した画像に暗号データを隠しこむ技術。暗号は特殊なソフトウェアを用いて解読するが、公開された画像は一般の人には何の変哲もない画像にしか見えない。
このほか、FBIによると、ボストン(Boston)、シアトル(Seattle)やニュージャージー(New Jersey)州ホーボーケン(Hoboken)などの容疑者の自宅から、パスワードで保護されたコンピューター用のディスクが押収された。これらのディスクには、対外情報局が作成したステガノグラフィー・プログラムが入っていたという。
また、容疑者らはラップトップPCを使ったプライベートな無線ネットワークで対外情報局と通信を行っていた。ある容疑者がニューヨークのコーヒーショップでラップトップPCを使っていたところに、ロシア当局者を乗せたミニバンが、データ通信ができるほど近くにまで近づいたことあった。
偽の身分をつくるための出生証明書を貸金庫で受け渡したこともあった。容疑者の1人は、2005年に死亡したカナダ人男性に成りすましていた。
■すでに米重要人物と接触
対外情報局が諜報員に宛てた暗号メッセージのいくつかはFBIが解読に成功している。2009年の暗号には次のようなメッセージが書かれている。「諸君が米国に送られたのは長期ミッションに従事するためだ。諸君の教育、銀行口座、自家用車、住宅は全て、1つの目的を達成するために与えられた。その目的とは米国の政策立案者らとの関係を構築して動きを探り、インテル(秘密情報の意)をC(モスクワ・センターの意)に報告することだ」
また、容疑者らが接触した米国の政府関係者は、対外情報局との通信で、しばしば「農民」「ネコ」「オウム」などのコード名で呼ばれており、「(諜報員と)オウムとの関係は、今後、米政界の貴重な情報源となる可能性が高い」など書かれたメッセージも見つかっている。(c)AFP/Chris Lefkow
米司法省の文書には逃亡中の1人を含む11人が、米国人やカナダ人に成りすまして米国社会に溶け込み、長期間にわたってロシア対外情報局(SVR)のために諜報活動を行っていた様子が詳細に記されている。ロシア対外情報局は、ソ連時代の国家保安委員会(KGB)の後身組織にあたる。
■スパイ映画ばりの活動
FBIは容疑者らの自宅には盗聴器、車には衛星利用測位システム(GPS)を仕掛けたほか、容疑者らが利用するレストランやホテルの客室などにも隠しカメラを設置し、秘密裏に彼らの行動や電子メール、電話の通話を監視してきた。
こうした監視記録の中には2000年にまでさかのぼるものもあり、今回、身柄を確保した何人かについて、米当局が早い段階からロシアの諜報員であることを把握していた事実を物語る。
諜報員のうち数人は1990年代前半~半ばに夫婦を装って米国に入り、ロシアとの関連をすべて隠した上で対外情報局の本部を意味する「モスクワ・センター」からの指示に従ってスパイ活動を続けていた。
米司法省の文書によると、容疑者らはさまざまな機会をとらえて駐米ロシア高官から活動費を受け取っていた。こうした高官の中には、ニューヨーク(New York)の国連(UN)本部に勤務するロシア人職員も含まれていたという。
2006年6月には容疑者の2人がニューヨーク州ワーツボロ(Wurtsboro)に向かい、仲間がその2年前に地中に埋めていた活動資金を掘り起こしたとの記録もある。
■先端技術を駆使して通信
また容疑者達はさまざまな手段を使ってモスクワ・センターと連絡を取っていた。
そのひとつ、ステガノグラフィーは、一般に公開されているウェブサイトに掲載した画像に暗号データを隠しこむ技術。暗号は特殊なソフトウェアを用いて解読するが、公開された画像は一般の人には何の変哲もない画像にしか見えない。
このほか、FBIによると、ボストン(Boston)、シアトル(Seattle)やニュージャージー(New Jersey)州ホーボーケン(Hoboken)などの容疑者の自宅から、パスワードで保護されたコンピューター用のディスクが押収された。これらのディスクには、対外情報局が作成したステガノグラフィー・プログラムが入っていたという。
また、容疑者らはラップトップPCを使ったプライベートな無線ネットワークで対外情報局と通信を行っていた。ある容疑者がニューヨークのコーヒーショップでラップトップPCを使っていたところに、ロシア当局者を乗せたミニバンが、データ通信ができるほど近くにまで近づいたことあった。
偽の身分をつくるための出生証明書を貸金庫で受け渡したこともあった。容疑者の1人は、2005年に死亡したカナダ人男性に成りすましていた。
■すでに米重要人物と接触
対外情報局が諜報員に宛てた暗号メッセージのいくつかはFBIが解読に成功している。2009年の暗号には次のようなメッセージが書かれている。「諸君が米国に送られたのは長期ミッションに従事するためだ。諸君の教育、銀行口座、自家用車、住宅は全て、1つの目的を達成するために与えられた。その目的とは米国の政策立案者らとの関係を構築して動きを探り、インテル(秘密情報の意)をC(モスクワ・センターの意)に報告することだ」
また、容疑者らが接触した米国の政府関係者は、対外情報局との通信で、しばしば「農民」「ネコ」「オウム」などのコード名で呼ばれており、「(諜報員と)オウムとの関係は、今後、米政界の貴重な情報源となる可能性が高い」など書かれたメッセージも見つかっている。(c)AFP/Chris Lefkow