【4月21日 AFP】韓国の検察当局は20日、脱北者の中では北朝鮮時代の地位が最も高い黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ、Hwang Jang-Yop)元北朝鮮労働党書記(87)の暗殺を図るため、脱北者を装って韓国に入国したとして、北朝鮮の工作員2人を逮捕したことを明らかにした。(ヨプは火ヘンに「華」)

 工作員2人は前年12月、脱北者として中国経由でタイに入国し、1月と2月にそれぞれ韓国へ到着した。朝鮮人民軍の情報部にあたる偵察総局の金英徹(キム・ヨンチョル、Kim Yong-Chol)局長から直接指令を受けたことを2人とも認めているという。

 韓国の情報機関、国家情報院(National Intelligence Service)によると、北朝鮮時代の自分の経歴について工作員らが嘘を語っていることに気づいた脱北者たちが詰問した中で、素性が露見した。当局によると、2人はともに36歳の男性で、2004年からスパイ訓練を受けてきた。

 こうした事態を受け、韓国警察当局は21日、黄氏の身辺警備を強化した。黄氏の所在地は伏せられている。

 狙われていた黄氏は北朝鮮時代、労働党書記として同党の指導理論であるチュチェ(主体)思想の理論構築にも関わっていた。金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong Il)総書記を教えたこともある。しかし97年、北京(Beijing)訪問中に亡命した。脱北者の中では最高位の人物だ。

 韓国・聯合(Yonhap)ニュースが報じた側近の話によると、これまでにも暗殺予告を受けたことのある黄氏は今回の計画発覚についても「気にするに値しない」と平静だという。(c)AFP