【3月30日 AFP】米テキサス(Texas)州ハンツビル(Huntsville)で24日、死刑執行の直前に連邦最高裁から執行の一時差し止め命令が届き、死刑囚が命拾いをするという出来事があった。夫の無実を訴えてきたこの死刑囚の妻の念が通じたのかもしれない。

 命拾いをしたのは、ヘンリー・スキナー(Henry Skinner)死刑囚(47)。1993年の大晦日に、テキサスの自宅で当時付き合っていた女性とその息子2人を殺害したとして、1995年に死刑判決が確定した。だが、スキナー死刑囚は一貫して犯行を否認。DNA鑑定を求めてきた。同死刑囚は、抗不安薬やアルコールの影響で事件当時は意識がなく、犯行を実行するのは不可能だったと主張し、血液検査でも薬剤反応が確認されている。

 フランス人のサンドリーヌ・アジョルジェ・スキナー(Sandrine Ageorges-Skinner)さん(49)は、死刑廃止活動家でもあることから事件後の1996年、刑が確定していたスキナー死刑囚と初めて手紙で接触。以降、文通を続けた2人は、2000年にサンドリーヌさんがスキナー死刑囚を収容先に訪ねて初めて顔を合わせる。2008年5月にスキナー死刑囚からのプロポーズで2人は結婚した。

 だが、米国の刑事司法制度は、挙式の日でさえ、2人がともに過ごすことを許さなかった。死刑囚は完全隔離が鉄則となっているからだ。サンドリーヌさんは、「初めて夫に触れる日は、刑が執行された夫の葬儀の日かもしれない」としながらも、「そんな日は、絶対に来て欲しくない」と力をこめて話した。

 スキナー死刑囚に対する刑の執行は一時的には停止された。だが、連邦最高裁は今後、事件の再捜査を指示するか、それとも刑の再執行の日時を決定するかの判断を下すことになる。

 サンドリーヌさんは再捜査に希望をつなぎながらも、死刑執行もありうるという現実から目を背けてはいない。だが、それでも夫への愛情は生き続けるとサンドリーヌさんは語る。「何が起ころうとも、わたしたちは常に共にいる。このきずなが死によって終わることはない」(c)AFP/Lucile Malandain