【2月1日 AFP】2009年10月にインド洋をヨットで航行中にソマリアの海賊に誘拐された英国人夫妻の取材に、前月28日、AFP記者が報道関係者として初めて成功した。

 誘拐されたポール・チャンドラー(Paul Chandler)さん(60)と妻のレイチェル(Rachel Chandler)さん(56)は、ソマリア沿岸の村Elhurと内陸部のアマラ(Amara)に別々に拘束されている。今回、海賊から夫妻の診察を許可された医師にAFPカメラマンが同行し、取材に成功した。

■「夫はどこにいるの?」

「助けてください、私たちはちゃんとした扱いを受けていないんです」。木に取り囲まれた小さなオレンジ色のテントの中、ラグマットに座ったレイチェルさんは医師やAFP記者に訴えた。銃を持った海賊が周囲を警戒していた。

 医師の診断によると、レイチェルさんの健康状態は心身ともに不良。特に、緊迫した状態に置かれていることから精神的な消耗が激しいという。診察中も、取り乱した様子で何度も「夫はどこにいるの?」と医師に尋ね、夫に会いたいと青い顔で訴えた。

 一方、夫のポールさんは、レイチェルさんと比べると精神的にはしっかりしていたものの、やはり互いに離れ離れにされた状況は辛いと話した。医師によると、咳がひどく、熱もあるようだという。

■大事に扱うよう医師が助言

 今回、夫妻を診察した医師は、ソマリアの氏族の間で尊敬されている外科医で、3週間かけて夫妻を訪問する許可を海賊から得たという。ただ、海賊は薬の持参を認めなかったため、医師は処方箋を書いて海賊に渡したと話した。その上で、「このままだと夫妻は死んでしまう。金がほしいなら大事に扱い、2人を引き合わせなさい」と海賊に助言したという。

 身代金については、チャンドラー夫妻も海賊も言及しなかった。(c)AFP/Mohamed Dahir

【関連記事】ソマリアの海賊に誘拐された英国人夫妻、夫が電話で現状語る