【11月7日 AFP】米テキサス(Texas)州フォート・フッド(Fort Hood)陸軍基地で5日、精神科医のニダル・マリク・ハサン(Nidal Malik Hasan)少佐(39)が銃を乱射し、13人が死亡、30人が負傷した事件を受け、米軍は徴兵のあり方や兵士の安全、軍におけるイスラム教徒の役割などについて難しい問題に直面している。

 約140万人の米国の軍人のうちイスラム教徒だと公言しているのは約3500人。ハサン容疑者もその1人だ。

 犯行の動機は明らかになっていないが、ハサン容疑者の人物像から、容疑者の信仰と感受性が犯行につながった可能性もあると指摘されている。

 ハサン容疑者のおばは、同容疑者は軍で反イスラム的な嫌がらせを受け、除隊を希望していたと語っている。また、容疑者の同僚の1人が米Fox Newsに語ったところによると、ハサン容疑者は米国のイラクでの戦争に怒りを覚えており、イスラム教徒は「立ち上がって侵略者と戦うべきだ」と話していたという。

 米国のイスラム教団体は、この事件でムスリムへの風当たりが強くならないよう平静を呼びかけている。一方、右派の論客の中には「敵を助けようとする」イスラム教徒が軍に浸透しているとの声もある。

 今回の事件は、軍の中で「自家製テロ」を起こしかねない人物をどのように見つけるかという点でも懸念を高めた。軍は徴兵時にさまざまな観点で人物を評価しているが、現時点でこの評価基準や採用手順を変更する予定はないとしている。

 また、戦争で精神的な傷を負った兵士の話を聞くという精神科医としての仕事がハサン容疑者に与えた影響を調べる必要があるという専門家もいる。ハサン容疑者のおばが米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)に語ったところによると、ハサン容疑者はほとんど顔が溶けるほどの重度のやけどを負った兵士のことを思い出し、ひどいショックを受けたと話していたという。(c)AFP/Dan De Luce