【10月22日 AFP】(一部訂正)ドイツ国境に近い仏ミュルーズ(Mulhouse)の裁判所前に18日、猿ぐつわをかまされ、両手を縛られたうえ、頭から血を流した男性が転がされているのが見つかった。

 警察の調べで、男性は27年前、14歳の養女を誤って死なせたとして、フランスの裁判所で禁固15年の有罪判決を受けたディーター・クロムバッハ(Dieter Krombach)というドイツ人元医師(74)とわかった。

 同元医師は1982年、独リンダウ(Lindau)の自宅で、養女のカリンカ・バンベルスキー(Kalinka Bamberski)さんに薬物を注射し死なせたとして、95年に仏裁判所から被告欠席のまま、過失致死罪で禁固15年の実刑判決を受けていた。

 仏司法当局はドイツ政府に対し、クロムバッハ元医師の身柄引き渡しを要請したが、ドイツ側は元医師がすでにドイツ警察の調べで嫌疑不十分となっていることを理由に拒否していた。  これに対し、カリンカさんの実父、アンドレ・バンベルスキー(Andre Bamberski)さん(74)は注射は暴行目的だったと主張し、「カリンカに正義を」という運動団体を作って20年間にわたりクロムバッハ元医師の収監を求めてきた。

 裁判所の前にクロムバッハ医師が転がされていると警察に通報してきたのがバンベルスキーさんとわかり、仏当局は同日、バンベルスキーさんの身柄を拘束。20日、バンベルスキーさんを誘拐などの容疑で立件した。バンベルスキーさんには、クロムバッハ元医師を自分の手で裁判所に突き出す目的で、ドイツから拉致してきた疑いが持たれている。

 バンベルスキーさんは釈放後、記者団に対し、同医師の誘拐とフランスへの移送をある人物に依頼したが、体を痛めつけることは頼んでいないと語った。

 仏司法当局はまた、クロムバッハ元医師についても、95年の判決に基づき収監の手続きを進めている。同元医師は頭の傷の手当てのため、パリ(Paris)の病院に入院している。

 同元医師は97年、16歳の女性患者の手術中に麻酔を打って性的虐待をした罪で、執行猶予付き2年の判決を受けるとともに、医師免許を剥奪されている。また、07年には違法に営業を続けていたとして、詐欺罪で有罪になっている。(c)AFP