米国で薬物注射の死刑に批判再燃、オハイオ州の執行失敗で
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【10月6日 AFP】前月、米オハイオ州(Ohio)で死刑囚の静脈が見つからずに薬物注射による死刑執行が延期されたことから、同州では死刑執行が一時中止される事態となっており、死刑の執行方法全般の再検討にまで発展する可能性も出ている。
オハイオ州で薬物注射による死刑執行が一時中止されたことを受けて、テッド・ストリックランド(Ted Strickland)オハイオ州知事(民主党)は5日、死刑囚2人の死刑執行の延期を指示した。
発端は前月15日、ロメル・ブルーム(Romell Broom)死刑囚(53)の死刑執行にあたり、死刑執行官が18回にわたり注射針を刺したものの、2時間かかっても静脈が見つからず、執行が延期となったことだった。死刑囚が執行日に死刑執行されなかったのは1946年以来だった。
その後、ブルーム死刑囚の弁護士らは、ブルーム死刑囚が同じ刑罰に2度処されることの無いよう異議申し立てを行った。
米市民団体「死刑情報センター(Death Penalty Information Center、DPIC)」のリチャード・ディーター(Richard Dieter)事務局長は、「オハイオ州の死刑執行は、(ブルーム死刑囚の)問題が解決されるまで中止されるだろう。半年や1年はかかる可能性もある」と述べる。
■米国で広く用いられている薬物注射
ストリックランド州知事は、早急に薬物注射の代案を検討する必要があると述べた上で、「薬物注射を実施しているどの州でも起きる可能性のある出来事だ。たまたまオハイオ州で起きたが、フロリダ(Florida)州でも起きた可能性があった」と語った。
フロリダ州では06年12月、Angel Diaz死刑囚の死刑執行で薬物が筋肉に注射されたために、死刑囚が34分間にわたって苦しむという出来事があり、当時も薬物注射に対して再検討を求める声が巻き起こった。
とはいえ、米国人の多くは薬物注射を支持しており、米国で死刑制度を実施するすべての州で薬物注射が用いられている。また、支持者らは、薬物注射が迅速で苦痛をともなわない執行方法だと主張している。
薬物注射は、まず初めに麻酔剤が注射され、次に筋肉を麻痺(まひ)させる薬剤が注射され、そして最後に心臓を停止させる薬物が注射される。
米医師会(American Medical Association)の方針に従い、医師による薬物注射は行われていないが、ディーター氏は、薬物注射のいくつかの問題はこのことが原因だと指摘する。
「ほかの州でも同様の問題が起きている。すべての州が基本的に同じ手順で、これら3つの薬物を用い、医師不在での静脈注射を実施しているからだ」(リチャード・ディーター氏)
■死刑制度の是非めぐる議論再燃か
オハイオ州選出の民主党上院議員、ジェニファー・ブルーナー(Jennifer Brunner)氏は、政治関連ニュース・ブログサイト「ハフィントン・ポスト(Huffington Post)」でこの問題についての論説記事を発表し、死刑制度の再検討の幅広い議論を呼びかけた。
また、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙も、「死刑制度の最も残酷な姿」が今回の注射失敗で明らかになったとして再検討を呼びかけている。
米連邦最高裁は、薬物注射を合憲とする判断を08年に下しており、ジョン・ロバーツ(John Roberts)連邦最高裁長官は判決文で、死刑の執行がもたらすすべての苦痛の危険性を取り除く義務は政府には無いとしていた。
しかし、最高裁は、議論を継続する余地も残している。左派寄りのジョン・ポール・スティーブンス(John Paul Stevens)最高裁判事は、薬物注射と死刑執行について「新たな議論」が巻き起こることを確信していると述べていた。
米国では、これまでに死刑囚1000人以上が薬物注射で死刑を執行されている。(c)AFP/Lucile Malandain
オハイオ州で薬物注射による死刑執行が一時中止されたことを受けて、テッド・ストリックランド(Ted Strickland)オハイオ州知事(民主党)は5日、死刑囚2人の死刑執行の延期を指示した。
発端は前月15日、ロメル・ブルーム(Romell Broom)死刑囚(53)の死刑執行にあたり、死刑執行官が18回にわたり注射針を刺したものの、2時間かかっても静脈が見つからず、執行が延期となったことだった。死刑囚が執行日に死刑執行されなかったのは1946年以来だった。
その後、ブルーム死刑囚の弁護士らは、ブルーム死刑囚が同じ刑罰に2度処されることの無いよう異議申し立てを行った。
米市民団体「死刑情報センター(Death Penalty Information Center、DPIC)」のリチャード・ディーター(Richard Dieter)事務局長は、「オハイオ州の死刑執行は、(ブルーム死刑囚の)問題が解決されるまで中止されるだろう。半年や1年はかかる可能性もある」と述べる。
■米国で広く用いられている薬物注射
ストリックランド州知事は、早急に薬物注射の代案を検討する必要があると述べた上で、「薬物注射を実施しているどの州でも起きる可能性のある出来事だ。たまたまオハイオ州で起きたが、フロリダ(Florida)州でも起きた可能性があった」と語った。
フロリダ州では06年12月、Angel Diaz死刑囚の死刑執行で薬物が筋肉に注射されたために、死刑囚が34分間にわたって苦しむという出来事があり、当時も薬物注射に対して再検討を求める声が巻き起こった。
とはいえ、米国人の多くは薬物注射を支持しており、米国で死刑制度を実施するすべての州で薬物注射が用いられている。また、支持者らは、薬物注射が迅速で苦痛をともなわない執行方法だと主張している。
薬物注射は、まず初めに麻酔剤が注射され、次に筋肉を麻痺(まひ)させる薬剤が注射され、そして最後に心臓を停止させる薬物が注射される。
米医師会(American Medical Association)の方針に従い、医師による薬物注射は行われていないが、ディーター氏は、薬物注射のいくつかの問題はこのことが原因だと指摘する。
「ほかの州でも同様の問題が起きている。すべての州が基本的に同じ手順で、これら3つの薬物を用い、医師不在での静脈注射を実施しているからだ」(リチャード・ディーター氏)
■死刑制度の是非めぐる議論再燃か
オハイオ州選出の民主党上院議員、ジェニファー・ブルーナー(Jennifer Brunner)氏は、政治関連ニュース・ブログサイト「ハフィントン・ポスト(Huffington Post)」でこの問題についての論説記事を発表し、死刑制度の再検討の幅広い議論を呼びかけた。
また、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙も、「死刑制度の最も残酷な姿」が今回の注射失敗で明らかになったとして再検討を呼びかけている。
米連邦最高裁は、薬物注射を合憲とする判断を08年に下しており、ジョン・ロバーツ(John Roberts)連邦最高裁長官は判決文で、死刑の執行がもたらすすべての苦痛の危険性を取り除く義務は政府には無いとしていた。
しかし、最高裁は、議論を継続する余地も残している。左派寄りのジョン・ポール・スティーブンス(John Paul Stevens)最高裁判事は、薬物注射と死刑執行について「新たな議論」が巻き起こることを確信していると述べていた。
米国では、これまでに死刑囚1000人以上が薬物注射で死刑を執行されている。(c)AFP/Lucile Malandain