【10月1日 AFP】英国で若者グループから10年にわたって暴行やいやがらせを受けていた母親が、07年に車に火を付けて知的障害のある娘と無理心中するという事件があり、英警察は28日、母親の助けになれなかったことを謝罪した。

 裁判所で開かれた調査によると、英国中央部のブルウェル(Bullwell)に暮らすフィオナ・ピルキントン(Fiona Pilkington)さんは、精神的苦痛や暴行を10年間にわたって受けているとして、33回にわたり電話で警察に助けを求めていた。しかし、警察官や地元当局者らはこの要請を優先事項として扱わず、2007年10月、2人の遺体が自宅付近の燃えた自動車の中から発見されることとなった。

 若者グループには、最年少で10歳のメンバーがいた。シングルマザーのピルキントンさんの自宅に石や小麦粉、卵などを投げつけ、壁に立ち小便し、裏庭を荒らし回っていたという。

 18歳だったピルキントンさんの娘、フランチェスカ(Francecca Hardwick)さんも、若者グループからののしりを浴びせられるなど被害を受けていた。フランチェスカさんは知的障害があり、精神年齢は4歳程度だったという。

 また、読み書きが困難なディスレクシア(難読症)だった息子のアンソニー(Anthony)さん(現在19)もナイフで脅されて納屋に閉じこめられるなど、いやがらせの標的となった。鉄の棒で殴打されたこともあったが、若者グループは誰1人として、これまでに1度も起訴されていないという。

 母親のピルキントンさんも学習障害(LD)があり、つきっきりで子どもたちの介護をするなか、引っ越しをする資金も無く、うつ病と不眠症に苦しんでいたという。

 オリビア・デービソン(Olivia Davison)検視官は、ピルキントンさん一家が、自宅に「包囲された」状態だったと状況を説明した。

 英レスターシャー(Leicestershire)州警察本部長のクリス・エア(Chris Eyre)氏は、警察が家族の置かれた危険な状況を認識していなかったと述べ、記者団に「当時、家族の要請を満たす行動がとれなかったことを非常に遺憾に思う」と謝罪を表明した。(c)AFP