【9月7日 AFP】米アイダホ(Idaho)州を管轄する第9連邦巡回控訴裁判所は4日、ブッシュ政権が対テロ政策の下で進めた予防拘禁の一環で、米国籍のアブドラ・キッド(Abdullah al-Kidd)氏が拘束されたことの違法性を認めた。

 米国のブッシュ前政権が、米同時多発テロ事件の重要参考人として拘束した人物が、前政権の高官、ジョン・アシュクロフト(John Ashcroft)元司法長官を相手取り訴訟を起こす可能性が生まれた。

 キッド氏は2003年3月16日にワシントンのダレス(Dulles)空港で、2001年9月11日に発生した米同時多発テロ事件の重要参考人として拘束され、以後16日間、複数の拘置所などに拘置された。釈放はされたが、その後も1年以上、厳重な監視下に置かれ、移動制限やパスポートの没収、保護監察官への報告などを科された。

 当時アシュクロフト長官は「法を犯す者や重要参考人を積極的に拘束することは、新たな攻撃を防ぐために不可欠だ」と発言していたが、今回の控訴裁の認定により、そうした政策の実践を推進したアッシュクロフト長官が訴訟の対象となる可能性が出てきた。

 2006年には、重要参考人はその人物が逃亡する可能性がある場合か、特定の状況下でしか拘束できないという判決が出ている。

 キッド氏は最終的に参考重要人から外され、裁判での証言にも呼ばれなかった。しかし、そうした治安関連の容疑をかけられた前歴のために就職機会を失ったと主張し、拘束の不当性を訴えていた。

 ミラン・スミス判事は、合衆国憲法の起草者たちは、重要参考人として「米国民を拘束、拘置、悪条件下で監禁することは認めないだろう。しかし悲しむべきことに、政府にはアメリカ市民を何か月も、ときにはひどい状況で拘束、拘置、束縛する権限があると、断固主張する者もいる」と指摘した。スミス判事は、そのような権力の乱用は、「市民が罪を犯した証拠があるからではなく、市民が犯罪を犯している可能性を、単に政府が調査したいだけであったり、彼らと外部の接触を政府が絶たせたいためだけである」と批判した。
 
 キッド氏の弁護人Lee Gelernt氏は、今回の認定で「アッシュクロフト元長官が憲法をう回して、連邦の重要参考人法を適用していたことを、裁判所が明確にした」と語った。(c)AFP