【8月17日 AFP】インド映画界「ボリウッド(Bollywood)」を代表するスター俳優、シャールク・カーン(Shahrukh Khan)さん(43)が15日、米ニュージャージー(New Jersey)州のニューアーク空港(Newark Airport)で、2時間にわたって取り調べを受けたと主張し、波紋が広がっている。インド政府は16日、米政府に強く抗議する意向を示した。

 カーンさんがシカゴ(Chicago)から電話でインドのCNN-IBNテレビに語ったところによると、入国管理官はコンピューター画面でカーンさんの氏名を目にしたとたん、訪米の理由をしつこく尋ねてきたという。「機内預け入れの荷物を待っていた時だった。親切にも別室に案内してくれるのかと思ったら、取り調べのためだった。書類に不備はなかった。全く、青天のへきれきだったよ」

 現地のインド大使館が介入し、ようやく解放されたカーンさんは取り調べの際、自身の供述が正しく伝わらない可能性を恐れて、多くを語らなかったという。「イスラム系の名前を持つ外国人に対して、米国人はよく、こういうことをしてきたからね」。カーンさんは、自分の名字がイスラム系に多いものであるため、空港での要チェックリストに掲載されていたのではないかとみている。

 カーンさんは「キング・オブ・ボリウッド」の異名を持つ超人気俳優で、前年には米ニューズウィーク(Newsweek)誌の「世界で最も影響力のある50人」の1人に選ばれている。今回の訪米はインド独立記念日の行事に参加するためだった。カーンさんが出演する最新作は『My Name is Khan(わが名はカーン)』といい、くしくもあるインド人男性が米国を旅行中に名前のせいで差別を受けるという内容となっている。

■インドは猛抗議、米国は釈明

 インド政府は16日、カーンさんが受けた扱いについて米国政府に強く抗議する意向を表明。プラフル・パテル(Praful Patel)民間航空相は記者会見で、「宗教や国籍を理由に、インド国民がこのような扱いを受けることはあってはならないことで、受け入れ難い」と語った。

 人気俳優カーンさんをめぐる事件は、ヒンズー語新聞「Dainik Jagran」が「シャールクに対する侮辱に怒り炸裂」、「Mail Today」紙も「大スターに侮辱的な宗教尋問、インドに衝撃走る」などの見出しで報じるなど、インド各紙も大々的に取り上げている。

 一方の米政府は、カーンさんに対する尋問は税関での一般的な手続きの一環に過ぎないと釈明。米税関国境警備局(US Customs and Border Protection)のケビン・コルサノ(Kevin Corsaro)報道官はAFPの取材に、カーンさんの手続きが遅れた理由は、荷物の紛失によるものだと語った。(c)AFP/Pratap Chakravarty/Ben Sheppard